西部開拓を由来とする州ニックネームの話 mohamoha34

州のニックネーム

これまで「植民地時代とアメリカ独立戦争」に関わるニックネームと「アメリカ南北戦争」に関わるニックネームを紹介しました。

植民地時代,独立戦争に関係する州ニックネームの話 mohamoha26
「リンカーンの州」とアメリカ南北戦争の話 mohamoha31

アメリカ史で言うと,上記の2つにもう一つ欠かせない項目があると思います

「西部開拓」に関することです。

そこで今回は「西部開拓時代(Old West,Wild West)」に関係する州のニックネームを紹介します。

「ディキシー」「フロンティアストリップ」:地域の呼び名の話① mohamoha10)にて,「フロンティア・ストリップ:frontier strip」という地域を紹介しました。

また,(「リンカーンの州」とアメリカ南北戦争の話 mohamoha31)の中でも西部開拓について触れています。
西部開拓と南北戦争は時期が重なっているからです。

まず初めに,西部開拓史についてこれまでのことも振り返って,紹介します。

西部開拓の流れ

西部開拓時代以前のアメリカ(1789年)

Made by User:Golbez., CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons

1783年にアメリカの独立戦争が終わりますから,その約6年後のアメリカの領土の地図です。

まず,地図上で「Colony of Louisiana(Spain)」となっている土地が,1800年にスペインからフランスの土地になり,さらに,1803年フランスのナポレオンからアメリカに売られることになります。

私が作成した現在のアメリカの州地図と比較してみると,ミシシッピ川の西側のミネソタ州の一部,アイオワ州,ミズーリ州,アーカンソー州,ルイジアナ州,そして,フロンティア・ストリップの地域(テキサスを除くノースダコタ州,サウスダコタ州,ネブラスカ州,カンザス州,オクラホマ州)が含まれていて,ルイジアナ領を入手したことがどれだけアメリカにとって大きかったかということが分かります。

中央の赤いラインがミシシッピ川です。

1819年に「フロリダ条約」がスペインと結ばれ,地図上の「East Florida」「West Florida」がアメリカの領土になります。

地図上で「Viceroyality of New Spain」となっている土地は,その後メキシコ領になります。

そのメキシコ領であった現在のテキサス州にあたるところは,1837年,メキシコから独立し,1845年に自発的にアメリカ合衆国に加盟します。

さらには,アメリカ・メキシコ戦争で勝利したアメリカが,1848年現在のカリフォルニア州,ネヴァダ州,ユタ州,アリゾナ州,ニューメキシコ州,ワイオミング州とコロラド州の一部をメキシコから購入します。

カリフォルニア州で金鉱が発見され,ゴールドラッシュになるのはメキシコから購入した同じ時期の1848年です。

これを機に太平洋側の本格的な開拓が始まります。

話は,先住民族に変わります。

本来アメリカの土地にはネイティブ・アメリカンの人々が住んでいました

1600年ごろから人々はアメリカに入植・移住してきたのですが,独立後も急速に人口が増加し,本来インディアンの領土であった土地にも入っていきます。

1830年,アンドリュー・ジャクソン大統領(Andrew Jackson)は「インディアン移住法: Indian Removal Act」を議会で可決させ,ネイティブ・インディアンの土地を安く購入し,彼らを当時はまだアメリカの領土ではなかった西部の「保留地:Reservation」に強制的に移住させます。

その保留地は現在のオクラホマ州で,「インディアン準州:Indian Territory」とされました。

約10万人のネイティブ・インディアンの人々が,この政策でインディアン準州に強制的に移住させられます。

ちなみに,ジャクソン大統領はアメリカ20ドルの肖像画になっています。

1862年,エイブラハム・リンカーン大統領が署名したことで,「ホームステッド法: Homestead Act」(自営農地法)が発効されました。

「ホームステッド法」は,政府の土地をみずから耕作する者には約64.6ヘクタールの土地が無償で与えるという法律で, 条件は21 歳以上の者が家を建てた上で最低 5 年間農業を営めばよいというものでした。

これにより,ミシシッピ川より西の地域の開発が急速に進み,人口が増加しました。

西部開発と人口増加は,アメリカの工業生産にとって市場の拡大を意味し,西部開発による農業東部の工業の両方が発展し,外国市場に依存しないアメリカの自立が確立していきます。

1869年「大陸横断鉄道:First Transcontinental Railroad」が,ネブラスカ州「オマハ:Omaha」からカリフォルニア州「サクラメント:Sacramento」に開通し,さらに西部開拓が促進します。

上記のような流れで,アメリカの領土はこのようになります。

Made by User:Golbez., CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons

ホームステッド法は1876年に終了します。

1890年のアメリカ国勢調査にて「もはや開拓地はない」と発表され,フロンティアの時代は終わったと結論づけられます。

1912年にニューメキシコ州とアリゾナ州が加盟し,現在のアメリカ本土が出来上がります。

そして,1959年にアラスカ州,ハワイ州が加盟します。

これまで紹介した中の,西部開拓に関係するニックネーム

まずは,これまでのニックネームの中で西部開拓に関係するものを探してみました。

農産物由来の州ニックネームの話 mohamoha14
ネブラスカ州の「コーンハスカー州:The Cornhusker State
ネブラスカ州のトウモロコシの大農場に入植者たちが集まり,トウモロコシの皮をむく仕事に従事したためこのようなニックネームがついたのでした。

特産物由来の州ニックネームの話 mohamoha15
カリフォルニア州の「黄金の州:The Golden State」「黄金郷の州:The Eldorado State
今回でも触れていますが,メキシコから購入したその年にカリフォルニア州で金鉱が発見され,ゴールドラッシュが起きたのでした。

ネヴァダ州とコロラド州の「銀の州:The Silver State
ゴールドラッシュと同じようにこの2つの州からシルバーラッシュが起こりますが,開拓時代には銀の暴落が起こっています。

アイダホ州の「宝石州:The Gem State
入植者たちにとって,アイダホ州の宝石も魅力的だったに違いありませんが,現在でもアイダホ州で宝石が獲れることに驚きです。

動物由来の州ニックネームの話② mohamoha17
ウイスコンシン州の「アナグマ州:The Badger State
ウィスコンシン州の入植者たちは鉱山労働者が多く丘の中腹にトンネルを掘り,時にはそこに住んでいたので,アナグマのようだとのことからこの名がついたのでした。

アメリカバイソンの話 mohamoha18
州のニックネームは登場していないですが,アメリカバイソンの話は西部への開拓者抜きで語ることはできません

さて,それでは,これまで紹介していない「西部開拓を由来とする州ニックネーム」を紹介します。

西部の母の州は,どこの州?

ミズーリ州
マザー・オブ・ザ・ウエスト:Mothe of the West
西部の母

ミズーリ州は西部開拓の中心的な場所となりました。
まず,南からミズーリ州を通って奴隷となったアフリカ系アメリカ人を連れていきました。
そして,ポニーエクスプレス(ミズーリ州からカリフォルニア州までの郵便速達サービス),オレゴントレイル(オレゴン州への道),サンタフェトレイル(ニューメキシコ州への道),カリフォルニアトレイル(カリフォルニア州への道)はすべてミズーリ州から始まりました。
また,西部開拓時代に始まった南北戦争の時には「ミズーリ妥協」が結ばれ,ミズーリ州は戦争のキープレイスになりました。(詳しくはmohamoha31で)

St. Louis Missouri skyline and the Gateway Arch on the Jefferson Nation Expansion Memorial. The Arch is the tallest monument in the United States. photo by Joel on Flickr (Commercial use allowed)

セントルイス:St. Louis」にある「ジェファーソン・ナショナル・エクスパンション・メモリアルJefferson National Expansion Memorial」です。

この公園内にそびえ立つのが「ゲートウェイ・アーチ:the Gateway Arch」で,高さ192mあります。

mohamoha10」のページのアイキャッチにこのゲートの拡大画像を使用したので,このブログに同じ対象の画像が2回使用することになります。

アーチの頂点には展望台があります。

展望台には地上からは見えないほどの小窓がついていて,セントルイスの街並みやその背後にあるグレートプレーンズを望むことができます。

アーチの地下には「西部開拓博物館:the Museum at the Gateway Arch」があり,ミシシッピ川や西部開拓の歴史に関する史料を展示しています。

早い者勝ちの州は,どこの州?

オクラホマ州
スーナー・ステイト:The Sooner State
早い者勝ちの州

オクラホマ州は,ネイティブ・アメリカの人たちの「インディアン準州:Indian Territory」だったのですが,南北戦争後,中央部の8000平方キロメートルほどが政府に割譲されます。
その土地は「オクラホマ」と呼ばれ,人々に入植するように勧められます。
1889年4月22日,「ランドラッシュ」によってオクラホマが解放されました。
「ランドラッシュ」とは,15ドルの入植手続き料を支払った21歳以上の者は,1人あたり65ヘクタールの土地を手に入れることができるとしたものです。
その場所選びには,正午の合図「よーい,どん!」で,境界線からスタートし「早い者勝ち」でした。
前置きが長くなりましたが,この「早い者勝ち」の意味からオクラホマ州は「スーナー・ステイト(早い者勝ちの州)」と言われているわけです。
オクラホマでのランドラッシュは,計5回あったそうで,その度にネイティブ・アメリカンの人たちの土地が割譲されました。
オクラホマ州の合法的に入植した州民は,否定的な意味合いがあるこのニックネームにかなり抵抗があったようですが,1900年代になるとこのニックネームにプライドと進歩主義の証として認めるようになったそうです。
「スーナー:Sooner」の他にも「ブーマー:Boomer」ともよばれていて意味は「おしかけ人」「煽る人」です。

この「ランドラッシュ」をテーマにした映画があるのをご存じでしょうか。

トム・クルーズと二コール・キッドマンが共演した「遥かなる大地へ:Far and Away」です。

アイルランドからアメリカにやって来て,オクラホマのランドラッシュに参加する青年の話です。

私は過去に見たことがあるのですが,「よーい,どん!」で単騎の馬や馬車が一斉にダッシュするシーンに圧倒された記憶があります。

それ以外はあまり覚えていなかったので,このページを書く前に改めて見直しました。

オクラホマ・テリトリーの「ランド・ラッシュ」の様子がよく分かる映画と言っていいのではないでしょうか。

また,大平原を幌馬車が走る風景にもかなり魅了されます。

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カウボーイの州は,どこの州?

Hello Wyoming! photo by Lorie Shaull on Flickr (Commercial use allowed)

ワイオミング州
バッキングホース・アンド・ライダー:Bucking Horse and Rider
カウボーイの州

実際には「カウボーイ・ステイト:The Cowboy State」でカウボーイの州というニックネームです。
Bucking Horse and Rider」としたのは,馬の背に乗ったカウボーイのトレードマークが実際にワイオミング州の公式な登録商標になっていて,このトレードマークにより,カウボーイの州と呼ばれているからです。
画像の看板の中央にあるのがトレードマークで「Bucking Horse and Rider」と呼ばれています。
西部開拓時代だけでなく,現在でもワイオミング州の大牧場ではカウボーイが牛を追う姿を見ることができるそうです。
また,ワイオミング州はロデオを州の公式のスポーツとしています。

ワイオミング州の「シャイアン:Cheyenne」では,7月に7日間,全米最大級のロデオ「シャイアン・フロンティア・デイズ :Cheyenne Frontier Days」が開催されます。

ロデオをメインとしたイベントで,開拓時代の服装に身を包んだ開拓者,カウボーイ,ネイティブ・アメリカンなどのパレード,開拓時代の生活用品を展示した博覧会などが行われ,カントリー・ミュージックのスター達が大勢やって来て,日中はロデオ,夜はコンサートという催しになっています。

Cheyenne Frontier Days Rodeo photo by Larry Jacobsen on Flickr (Commercial use allowed)

西部開拓と言えばやっぱり「ダンス・ウイズ・ウルブズ」

いろいろな西部劇がありますが,西部開拓時代の映画と言えば「ダンス・ウイズ・ウルブズ:Dances with Wolves」です。

これまでこのブログの「mohamoha10」と「mohamoha18」で,この映画に触れてきました。

土地を切り開いて開拓していくというよりも,ネイティブアメリカンのスー族との交流を描いている映画なんですが,西部開拓時代の未開拓地の原風景が見ることができると思います。

実際に撮影地はサウスダコタ州と一部ワイオミング州だそうです。

ダンス・ウィズ・ウルブズについて調べていると,私にとってかなり驚くことが3つ,主にウィキペディアに載っていました。

一つ目は,脚本を書いたマイケル・ブレイクが,2001年に続編小説「ホーリー・ロード:The Holy Road」を発表していることです。

今度は大陸横断鉄道に関わる平原ネイティブアメリカンと白人の衝突を描く作品だそうです。

残念なことに日本未発売だそうです。

2つ目は,映画の途中で白人に撃ち殺された(と思っていた)「ツー・ソックス」という狼ですが,実際には,死んだかどうかは映画の中ではあいまいにされており,主人公と先住民に育てられた白人女性がスー族から立ち去る最後のシーンで,ツー・ソックスらしき狼が遠吠えをしているというものです。

実際に確認をすると,本当に最後のシーンでは,崖の上で狼が遠吠えをしているのですが,それがツー・ソックスかどうかはちょっとわからないようになっていました。

3つ目は(これが一番驚きました),映画の中ではアメリカ・バイソンが感動的に登場するのですが,その中の2頭のアメリカ・バイソンの所有者は「ニール・ヤング:Neil Young」だということです。

まさか,ここでミュージシャンのニール・ヤングの名前が出てくるとは思いませんでした。

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種別:2LP 【輸入盤】 洋楽ロック 発売日:2017/12/08 登録日:2017/11/07 ニール・ヤング ハーヴェスト・ムーン ニール・ヤング CD 内容:[LP 1 : Side A]1. Unknown Legend2. Fro...

私自身は,ニールヤングをめちゃくちゃ聴いていたというわけではありませんが,「ハーヴェスト・ムーン:HARVEST MOON」はとても好きでよく聴いていました。

その「ハーヴェスト・ムーン」をニール・ヤングではなく,私がここ数年とても気に入っているアメリカのアーチストのカバーを貼っておきます。

是非,聞いてください。

「Reina del Cid」女性のヴォーカルとギターの方

「Toni Lindgren」女性のギターとハープの方,Reina del Cidのギタリスト

「Josh Turner」男性のコーラスとベースの方

「Carson McKee」男性のヴォーカルとパーカッションの方

4人のそれぞれがYouTubeのチャンネルを持っていて,それぞれのソロまたは女性同士や男性同士のペア,そして今回のように4人組で活動しています。

時には,様々な友人たちとのセッションを楽しんでいるときもあります。

4人でツアーをするときもあり,このYouTubeではオレゴン州へのツアー中に川辺で録画されたようです。

カヴァー曲が多いですが,オリジナル曲もかなりあり,とても聞きごたえがあります。

ぜひ,彼ら,彼女たちのYouTubeを訪れてみてください。

最後に,話がそれてしまいましたが,今回は,西部開拓に関係する州のニックネームの話でした。

さて,いよいよ,州のニックネームシリーズが大詰めを迎えようとしています。

なんと,次回でラストを迎えます。

まだ,アメリカ本土の州を全部紹介しているわけではありません。

あと一つの州の紹介がまだです。

なので,ラストはその州に絞って紹介します。

このページの情報の主な提供源は,「State Symbols USA」です。

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