今回は,ネイティブ・アメリカンを由来とする州のニックネームを紹介します。
その前に,ネイティブ・アメリカンのことを私がどれくらい知っているのかということになるのですが,特に詳しいわけではありません。
映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ」で得た知識ぐらいでしょうか。
そこで,まずはネイティブアメリカンのことを調べてから,それに関連する州のニックネームを紹介したいと思います。
ネイティブ・アメリカンについて
アメリカの先住民族のことを現在「ネイティブ・アメリカン:Native Americans」と呼んでいます。
コロンブスがアメリカ大陸を発見し,アメリカとインドを勘違いし,その土地の人々を「インディアン」と呼んだことはよく知られています。
詳しく言うと,アメリカの先住民族はアメリカ本土のネイティブ・アメリカンとエスキモー・アレウト,太平洋の島々のポリネシアン人などの人たちのことを指すようです。
しかし,アメリカの国勢調査では太平洋の島々の人たちは先住民には含まれていないそうで,現在,アメリカ連邦政府が認めているのはアメリカ本土のネイティブ・アメリカンとエスキモー・アレウトの部族です。
よって,これらの部族のみが,アメリカ内務省の「指定保留地:Indian reservation」を持つことを認められています。
しかし,アメリカ本土の部族の中で,アメリカ内務省と条約を打ち切り「絶滅部族」として認定されていない部族は保留地を持てず,各州に散って暮らしているそうです。
これらのの情報源は「ウィキペディア:アメリカ州の先住民族」からです。
「指定保留地」で私が一番よく認識しているのは「モニュメント・バレー:Monument Valley」です。
ここは,古くからの「ナバホ族居住地域:Navajo Nation」で,居留地となった現在ではナバホ族管轄で一般に公開されており,ナバホ族の聖地と呼ばれ有名な観光地となっています。
保留地の中には,自治権が強く一つの国家にも等しい力を持っているところもあるそうです。
保留地は,連邦政府との条約規定によって存在していますが,州政府の管轄内にあるため,部族政府は常に政府と州の両方を相手に交渉を行わなければならず,これまでいろいろな悲しい歴史を持っている部族も多いようです。
現在,ほとんどの保留地は産業を持てず,厳しい生活をしているそうです。
また,保留地で生活する限り条約規定に基づいたわずかな年金が入るため,これに頼って自立できない人々も多いそうです。
失業率は半数を超え,保留地に産業や就労先がないため,年金を捨て保留地外に出て生活する人たちが多くないようです。
ウィキペディアに載っている保留地のリストを数えると,現在,アメリカ全土に200以上の保留地があるようです。(ウィキペディア:List of Indian reservations in the United States)
ネイティブ・アメリカンの部族
私が名前を挙げられるネイティブ・アメリカンの部族と言えば「アパッチ族」とか「スー族」ぐらいです。
調べてみると,実際には星の数ほどと思えるくらいたくさんの部族がありました。
とても全部の部族を紹介することは無理なので,文化的特徴(特に言語)により部族ごとに地域に分けられているので,それをもとによく知られていると思われる部族を代表していくつか紹介したいと思います。
情報元は,「Britannica Native American indigenous peoples of Canada and United States」です。
カリフォルニア:California
かなりの部族があるのですが,ほとんどが今まで耳にしたことのない部族名でした。
一つあるとすれば「モハーヴェ族:Mohave」で,それは砂漠の名前と同様だったからです。
グレート・ベースン(大盆地):The Great Basin
この地域もあまり知らない部族ばかりでした。
かなり無理をして「ショショーニ族:Shoshoni」を載せておきます。(名前が覚えやすいという理由のみ)
南西:The Southwest
「アパッチ族:Apache」
詳しく言えば,6つの部族の総称だそうです。
私が「アパッチ」を聞き覚えがあるのは,たぶん西部開拓時代の映画に悪役として登場していたからかもしれません。実際に,ジェロニモ等の戦士が抵抗を続けた部族ですが,結局1886年に降伏しています。
「ナバホ族:Navajo」
冒頭でも触れたモニュメント・バレーを含む砂漠地帯に全米最大の保留地があります。
第2次世界大戦の日本戦で,暗号としてナバホ族の話す言語が用いられたことはよく知られた話ですよね。
他にも,日本に落とされた原子爆弾のウランの精製はこの保留地でされたようです。
「モハーヴェ族:Mohave」
カリフォルニア地区同様,砂漠の名前と同じというだけで取り上げました。
「プエブロ族:Pueblo」
詳しく言うと,部族の名前ではなく,伝統的な生活をする共同体や集落の総称としてこのように呼ばれます。
「タオス・ブエプロ:Taos Pueblo」の集落は世界遺産に認定されています。
南東:The Southeast
「チェロキー族:Cherokee」
これも聞き覚えがある部族名だと思いながら調べると,アメリカのSUVである「ジープ・チェロキー」はこの部族名が由来なんだそうです。
「ナチェズ族:Natchez」
ミシシッピ州の「ナッチェス:Natchez」を以前紹介しています。
「旅の準備の始まり:ミシシッピ川の話① mohamoha6」で,私がミシシッピ川に沿って旅をしたいと思い描くきっかけとなった旅番組を紹介しているのですが,その旅で「ナッチェス」を訪れています。
町の名前はナチェズ族が由来だそうです。
大平原:The Plains
「スー族:Sioux」
ダコタ族やラコタ族,ナコタ族の総称です。
西部開拓時代には勇敢に戦い,将軍の部隊を全滅させたことはよく知られています。
「ブラックフット族:Blackfoot」
正確に言えば,スー族の中になると思うのですが,名前が知られているため一応別に挙げておきます。
「ポーニー族:Pawnee」
ケビン・コスナー主演の映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ:Dances with Wolves」では,主人公がスー族と交流を深め,そのスー族と敵対しているのがポーニー族でした。
北東:The Northeast
「モヒカン族:Mohican」
モヒカンの髪形で名が知られています。
私は,もともとはネイティブ・アメリカンの部族の髪形だと知っていました。
これは戦士だけがする髪型だったそうです。
実際のモヒカン族の多くは,頭にタトゥーをしていたそうです。
北西太平洋岸:The Northwest Coast
「チヌーク族: Chinook」
かなりの数の部族があるのですが,なんとなく聞いたことのある名前と言うことでこの部族を紹介しました。
北西太平洋岸の部族の特徴は「トーテム・ポール:totem pole」になりますが,アメリカというよりもカナダの印象が強いですね。
家の中や家の前,墓地などに立てる柱状の木造彫刻ですが,ワシントン州にもあるようです。
とくに宗教的な意味合いはないそうです。
カナダでは,ネイティブ・インディアンのことを「ファースト・ネイション:First Nations」と呼ぶそうです。
北西高原:The Plateau
聞いたことのある名前の部族はありませんでした…。
さて,いよいよ本題であるネイティブ・アメリカンの部族が由来の州のニックネームの紹介になります。
ホークアイの州は,どこの州?
アイオワ州
ホークアイ・ステイト:The Hawkeye State
ホークアイ州
「大平原:The Plains」に「ソーク族:Sauk」が生活しており,その族長の名前が「ブラック・ホーク:Black Hawk」でした。
そのブラック・ホークへの称賛として「ホークの目:Hawkeye」というニックネームをアイオワ州は採用しました。
彼はネイティブアメリカンの最後の戦争として知られる「ブラックホーク戦争:The Black Hawk War」を率い,その戦争に敗れた後,アイオワ州に住んでいます。
彼は,1833年にオハイオ州でネイティブ・アメリカンによる初めての自伝を出版し,すぐにベストセラーとなりました。
ワシントンD.C.のアメリカ議会図書館にはブラックホークの肖像画があり,イリノイ州(アイオワ州との県境近く)の「ブラックホーク州立史跡:The Black Hawk State Historic Site」には彼の銅像(画像)があります。
アパッチの州は,どこの州?
アリゾナ州
アパッチ・ステイト:The Apache State
アパッチの州
アパッチ族は,乾燥したアリゾナ州とメキシコ南西部を移動する略奪部族でした。
乾燥した岩山を根城にし,襲撃方法は地形を利用した山岳ゲリラのような戦法だったそうです。
アパッチ族の戦士たちは,アメリカ軍のインディアン斥候隊に協力し,敵対部族や同じアパッチ族に対して戦ったそうです。
現在は「ナバホ保留地」の観光地で名が知れているアリゾナ州ですが,「アパッチ郡」にナバホ保留地もアパッチ保留地もあります。
スーの州は,どこの州?
ノースダコタ州
スー・ステイト:The Sioux State
スーの州
スー族の一部族である「ダコタ族」居住地がノーズダコタ州でした。
「ダコタ:Dakota」はもともとスー族の言葉で「友達」を意味するものです。
スー族のイメージとしては「サウスダコタ州」の方が強いのは「クレイジー・ホース記念碑:Crazy Horse Memorial」があるからでしょうか。
実際のスー族の保留地は,ノースダコタ州からサウスダコタ州にまたがっています。
ノースもサウスも両方一緒に「スー・ステイト」と言っていいのかもしれません。
サウスダコタ州の西部「ブラックヒルズ:Black Hills」に「クレイジー・ホース記念碑:Crazy Horse Memorial」があります。
クレージーホースは,「タシュンケウィトコ」という名前のスー族の中でも「ラコタ族」の戦士です。
アメリカ陸軍隊を全滅させたこともある強者です。
サウスダコタ州と言えば,マウントラシュモアの大統領の彫像があります。
このブログでも「公園・庭園・湖が由来の州ニックネームの話 mohamoha23」で紹介しました。
製作者は「コルチャック」という彫刻家です。
本人は制作の意図を「ラコタ族のスタンディング・ベア:Standing Bear」に頼まれたと説明しています。
「私たちにも偉大な英雄がいることを知らしめたい。マウント・ラシュモアよりも大きなクレイジー・ホースの彫刻を造ってほしい」と頼まれたそうです。
コルチャックが74歳で亡くなっても,家族である5人の息子と5人の娘がその遺志を継いで彫り続けています。
連邦政府から支援するという申し出があったそうですが,政府に任せると将来何らかの理由で計画が中断される可能性があるため,それを断ったそうです。
クレイジー・ホース像が完成すると「馬にまたがった長い髪を渦のようになびかせた裸の戦士が,左手で前方を指差している」というポーズをとっている彫像になるそうです。
しかし,スー族の戦士が指をさして号令をかけることは決してしないそうです。
スー族はすべて個人の判断で戦う集団だったそうで,クレージー・ホース自身もリーダーではなかったそうです。
現在,クレイジー・ホース記念碑は観光名所になっていますが,スー族の中にはこの制作に反対している人も多いそうです。
情報元は「ウィキペディア:クレイジー・ホース記念碑」からです。
地図で見ると,マウントラシュモアにけっこう近いことが分かります。
チヌークの州は,どこの州?
ワシントン州
チヌーク・ステイト:The Chinook State
チヌークの州
チヌーク族はワシントン州のコロンビア川周辺に定住し,そこで狩りや釣りをして暮らしていました。
彼らの主食は魚のサケでした。
漁業のために30人以上が乗れるカヌーをつくる造船技術を持っていました。
家も大きく,最大45mもある長い家を作り約20家族が一つの家に住んでいました。
この周辺で獲れるキングサーモンを「チヌーク・サーモン」と呼んでいるそうです。
チヌーク族の保留地はもちろんワシントン州にあり,コロンビア川のチヌークポイントでは毎年サーモンセレモニーを開催しているそうです。
残念ながら州のニックネームにはなっていないのですが,州のニックネームになってもおかしくない部族と州があります。
一応非公式ということで,私の独断でここに紹介します。
「ノース・カロライナ州」の「チェロキー族」です。
ノース・カロライナ州には「チェロキー郡」に「オコナルフティー・インディアン・ビレッジ:Oconaluftee Indian Village」があります。
ここでは,頑なに伝統を守ってきたチェロキー族の文化を体験できる場所です。
「チェロキー」は「山(または洞窟)に住むもの」を意味しているそうです。
このビレッジもグレート・スモーキー・マウンテンの麓にあります。
チェロキー族は山に暮らしていた部族と言っていいのだと思います。
現在,チェロキー族はこのノースカロライナ州とオクラホマ州の2つに分かれて保留地があるそうです。
【番外】赤い人々の州は,どこの州?
オクラホマ州
ランド・オブ・ザ・レッド・ピープル:Land of the Red People
赤い人々の州
これはちょっと番外になります。
「オクラホマ」はネイティブ・アメリカンの言葉が語源で,その意味が「赤い人々」なのだそうです。
そこから,オクラホマ州の人々をこのように呼んでいるそうです。
これは私の推測なのですが,昔この地域にいたネイティブアメリカンの部族は,赤色(おそらく赤土?)で顔や体にペイントしていたのではないでしょうか。
オクラホマ州は,このブログに初お目見えです。
最初の紹介が「番外編」なのは恐縮ですが,後のページで正式なニックネームを紹介する予定です。
ネイティブ・アメリカンの部族の名前とアメリカ軍用ヘリ
アメリカの軍用ヘリコプターの名前には,ネイティブアメリカンの部族名がよく使われています。
一時期,アメリカ軍の規定に「ネイティブ・アメリカンの部族名や首長の名前を参照する」というものがあって公式に認められていたそうです。
他の兵器等のネーミングにもネイティブ・アメリカンの文化を参照することが多いようです。
私も「ブラック・ホーク」と聞くと,部族の名前というよりも「ブラック・ホーク・ダウン」という戦争映画をまずは思いつきます。
ここでは,このページに紹介したネイティブ・アメリカンの名前を使用したヘリコプターを紹介します。
H-13 Helicopter Sioux
ネイティブ・アメリカンの部族名が初めて使用されたヘリコプター
「スー族」の名前が付けられました。
騎兵隊を全滅させたこともあるほど勇猛果敢に戦ったスー族への敬意からだそうです。
1964-10 – H-13 Helicopter Sioux photo by Steven Miller on Flickr (Commercial use allowed)
AH-64 Apache
「アパッチ族」の名前が付けられたヘリコプターです。
「世界最強のヘリ」と言われるこのヘリコプターに,山岳ゲリラ戦法で神出鬼没に現れ消える「アパッチ族」の名前が選ばれるのは納得です。
AH-64 Apache photo by Ronnie Macdonald on Flickr (Commercial use allowed)
CH-47 Chinook
「チヌーク族」の名前が付けられたヘリコプターです。
CH-47は輸送ヘリなのですが,大型のカヌーを造ったり何十人も生活できる家を造ったりできる技術を持っていた「チヌーク族」を選ぶことにセンスを感じます。
CH-47 Chinook – RIAT 2013 photo by Airwolfhound on Flickr (Commercial use allowed)
UH-60 Black Hawk
「ソーク族」の族長「ブラック・ホーク」の名前が付けられた多目的ヘリコプターです。
特殊作戦,戦術輸送,電子戦,医療搬送,救難活動など様々な任務に使用できるヘリコプターなのだそうです。
「ブラックホーク・ダウン」の映画は,医療搬送中のヘリコプターの話でした。
Sikorsky UH-60 “Black Hawk” photo by Robert Sullivan on Flickr (Commercial use allowed)
一応,映画「ブラック・ホーク・ダウン:Black Hawk Down」の紹介をしておきます。
私自身観たことはあるのですが,あまり印章には残っていません。
このページで触れているということで紹介だけしました。
このページの情報の主な提供源は,「State Symbols USA」です。
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