今回は,アメリカにある美術館を紹介したいと思います。
もちろん,自分の約10年後の長期アメリカ旅行にて訪れるべき美術館を視野に入れつつ,現在,人気のある美術館を32に絞って紹介したいと思います。
さて,「32選」というからには,アメリカにある数多くの美術館の中から「人気のある」ものを選ぶということです。
どのように選ぶか迷いましたが,良いやり方を思いつきました。
その選び方は,「アメリカの美術館ランキング」をしているサイトを調べ,順位に応じて数値化し,ランキングするというものです。
詳しく言いますと,合計16のサイト(日本のサイト6つ,アメリカのサイト9つ,YouTube1つ)からランキングを拝借し,点数化して,再度ランキングをするという作業をしました。
けっこう手間がかかりましたが,ある程度は個人の主観が入っていない「32選」になったのではないかと思います。
私のブログでは,主に地区ごとに紹介していきたいと思います。
また,私は,気持ちの面でも仕事の面でも美術関係に関わっていると言ってもよいので,作家や作品等には詳しい方だと思っています。
なので,美術館所蔵の作品については,個人的な思いを基に紹介していきたいと思います。
最初に,16のサイトのランキングを合わせて,再ランキングしたものを紹介します。
もちろん,このランキングは優劣を決定するものではなく,個人の印象や思い入れによって違ってきます。
アメリカの美術館ランキング
① メトロポリタン美術館:The Metropolitan Museum of Art 通称:The Met <New York,NY>
② ニューヨーク近代美術館:The Museum of Modern Art, New York 通称:MoMA <New York,NY>
③ ナショナル・ギャラリー・オブ・アート:National Gallery of Art <Washington D.C.>
④ シカゴ美術館:The Art Institute of Chicago <Chicago,IL >
⑤ ボストン美術館:Museum of Fine Arts, Boston <Boston,MA>
⑥ フィラデルフィア美術館:Philadelphia Museum of Art <Philadelphia,PA>
⑦ ソロモン・R・グッゲンハイム美術館:Solomon R.Guggenheim Museum <New York,NY>
⑧ J・ポール・ゲティ美術館:J. Paul Getty Museum <Los Angeles,CA>
⑨ ロサンゼルス・カウンティ美術館:Los Angeles County Museum of Art 通称:LACMA <Los Angeles,CA>
⑩ クリーブランド美術館:Cleveland Museum of Art <Cleveland,OH>
⑪ デトロイト美術館:Detroit Institute of Arts <Detroit,MI>
⑫ サンフランシスコ近代美術館:San Francisco Museum of Modern Art 通称:SFMoMA <San Francisco,CA>
⑬ ヒューストン美術館:The Museum of Fine Arts, Houston <Houston,TX>
⑭ ネルソン・アトキンス美術館:The Nelson-Atkins Museum of Art <Kansas City,MO>
⑮ フリック・コレクション:Frick Collection <New York,NY>
⑯ スミソニアン・アメリカ美術館:Smithsonian American Art Museum <Washington D.C.>
⑰ ザ・ブロード:The Broad <Los Angeles,CA>
⑱ ロサンゼルス現代美術館:Museum of Contemporary Art, Los Angeles 通称:MOCA <Los Angeles,CA>
⑲ ハーシュホーン博物館と彫刻の庭:Hirshhorn Museum & Sculpture Garden <Washington D.C.>
⑳ デ・ヤング美術館:M. H. de Young Memorial Museum <San Francisco,CA>
㉑ セントルイス美術館:Saint Louis Art Museum <St. Louis,MO>
㉒ ミネアポリス美術館:Minneapolis Institute of Arts <Minneapolis,MN>
㉓ イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館:Isabella Stewart Gardner Museum <Boston,MA>
㉔ ミルウォーキー美術館:Milwaukee Art Museum <Milwaukee,WI>
㉕ ダラス美術館:The Dallas Museum of Art <Dallas,TX>
㉖ ブルックリン美術館:Brooklyn Museum <New York,NY>
㉗ クリスタル・ブリッジズ美術館:Crystal Bridges Museum <Bentonville,AR>
㉘ サルバドール・ダリ美術館:The Dalí (Salvador Dalí Museum) <St. Petersburg,FL>
㉙ ノートン・サイモン美術館:The Norton Simon Museum <Pasadena,CA>
㉚ バーンズ・コレクション:Barnes Collection <Philadelphia, PA>
㉛ シンシナティ―美術館:Cincinnati Art Museum <Cincinnati, OH>
㉜ イェール大学アートギャラリー:Yale University Art Gallery <New Haven, CT>
これらのランキングした美術館を,何回かに分けて紹介していきたいと思います。
最初に紹介する美術館は,アメリカにある美術館の中で,私が今一番行ってみたいと思っているところです。
デトロイト美術館: Detroit Institute of Arts (ミシガン州デトロイト市)
私が,今一番行ってみたい美術館はデトロイト美術館です。
なので,一番最初に紹介します。
行きたいと思ったきっかけは,日本国内の美術館で開催された「デトロイト美術館展」を鑑賞したことです。
デトロイト美術館所蔵の作品が,いくつか日本国内の美術館で展示されたものなのですが,私は家族で「上野の森美術館」に行きました。
私は地方に住んでいますが,家族で東京に旅行した際に訪れました。
展示された作品では,モジリアーニやセザンヌのかなり名の知られた作品をじっくりと鑑賞しました。
しかし,私が興味を持ったのはデトロイト美術館の紹介のコーナーでした。
リベラ・コート :Rivera Court
デトロイト美術館 の内にある「リベラ・コート :Rivera Court」と呼ばれるホールの写真を見た時のインパクトはかなりのものでした。
旅行後,デトロイト美術館のリベラ・コートについて調べると,かなり興味深い意味が込められた作品群だったことがわかります。
リベラ・コートは,メキシコの壁画アーティストの巨匠「ディエゴ・リベラ: Diego Rivera (1886-1957) 」によるフレスコ画です。
フレスコ画は,昔からの絵画技法で,壁画を制作する際に用いられます。
絵画制作に使われる絵の具には糊となる材料が使われていますが,フレスコ画の場合,絵具(顔料)に糊が入っていません。
最初に,石灰と砂をまぜた「モルタル」を壁に塗り,乾燥していないうちに顔料を水だけで溶き,色を乗せていきます。
フレスコ画でよく聞かれる有名画家には,ラファエロやミケランジェロがいます。
ディエゴ・リベラは,1932年から1933年にかけて,11ヶ月の期間でこの壁画を仕上げたそうです。
毎日,20時間近くを壁画の制作に費やしたそうです。
まず,上の画像の奥にある正面の壁は,農業がテーマになっています。
ふくよかな女性が左右に二人,麦穂と果実の収穫物を腕に抱えています。
その下には,地下の球根で眠る胎児がいます。
「北壁: the North Wall」と「南壁: the South Wall」には,自動車工場で働く労働者達が描かれています。
デトロイトと言えば,自動車産業や鉄鋼業で大いに発展した町です。
しかし,現在では,この地域は「ラスト・ベルト:rust belt(錆びついた)」と呼ばれるほど,産業は衰退している地域です。
この壁画が描かれたのは,1932~33年の大恐慌時代。
デトロイトも恐慌の波を受け,自動車工場労働者たちも大量に解雇された時だったそうです。
しかし,リベラの壁画は,活気にあふれる自動車工場で働く人たちを生き生きと描いています。
「もう一度,活気あふれる工場を」というリベラの思いが込められているそうです。
実際に,デトロイトは大恐慌後,活気を取り戻します。
しかし,1970年代に入り,日本車の台頭とともに完全に衰退していきます。
上の方には人間が2人,横たわっています。
北壁の方の2人の手には鉄鉱と石炭,南壁の方の2人の手には石灰石と砂が握りしめられています。
鉄鉱石,石炭,石灰石,砂の4つが工業の根幹を成すものだからだそうです。
4人の人間は,それぞれの人種の代表のように描かれています。
1930年代にどの人種も同じように描かれることは,かなり進んだ考え方だったようです。
リベラは共産主義者でした。
そのために,描かれた作品はプロレタリア美術として見られることが多いです。
プロレタリア美術とは,1920~30年代に世界を席巻した社会主義・共産主義運動の中から生まれた「労働」をテーマにした左翼的な美術運動です。
資本主義経済であるにもかかわらず,リベラに壁画の製作を依頼したことは,さすがアメリカだと私には感じられます。
リベラは,資本主義大国のアメリカの地で,プロレタリアトを思わせる壁画を作ることに,とてもやりがいを感じたと感想を言っていたそうです。
ディエゴ・リベラについては,このyoutubeをご覧ください。
映像だけでも,彼の活動が理解できると思います。
さて,デトロイト美術館を語る場合,もう一つ紹介したいことがあります。
デトロイト美術館の奇跡
まずは,本の紹介です。
原田マハ著「デトロイト美術館の奇跡」(新潮文庫)
デトロイト市は,2013年7月に負債総額180億ドルを抱えて「破産宣言」をします。
デトロイト市は財政破綻したことで,デトロイト美術館の約100億ドル(クリスティーズの試算)のコレクションを売却することを検討します。
しかし,デトロイト住民の反対意見が大きく,国内外から多くの支援金が集まったため,作品を売らずに存続できることになりました。
現在,デトロイト美術館は市の管理下を離れて,独立行政法人となり,収蔵品は1点も欠けることなく未来に残すべき文化的資源として大切にされています。
「デトロイト美術館の奇跡」は,デトロイト美術館の財政破綻という歴史的事実をもとに,我が町の美術館を守ることに成功した物語を描いた心温まる小説です。
この小説でピックアップされた1枚の絵は,本の表紙にもなっている「セザンヌ:Paul Cézanne」の「マダム・セザンヌ:Madame Cézanne」です。
「デトロイト美術館の奇跡」 は,美術館が好きな方にはお勧めの本です。
1885年に創立されたデトロイト美術館は,自動車業界の有力者らの資金援助を通じて多くの名作を収集してきました。
特に,豊かな財力があった1920年代に,アメリカの公立美術館として,初めてゴッホやマティス等の名が知られた画家たちの作品を購入しました。
それらのコレクションが,この公立の美術館を一躍有名にします。
デトロイト美術館所蔵の作品紹介
デトロイト美術館所蔵の作品をいくつか紹介します。
まずは,誰もが知っているであろう作家の自画像から。
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ:Vincent Willem van Gogh
自画像:Self-Portrait with Straw Hat
1887年パリの夏にて
油絵,キャンバス
この自画像は,米国の公立美術館に収められた初めてのゴッホ作品です。
ゴッホが,パリ在住,34歳の頃の自画像です。
もう一つ,同じくポスト印象派の画家の自画像を紹介します。
ウジェーヌ・アンリ・ポール・ゴーギャン:Eugène Henri Paul Gauguin
自画像
1893年頃
油彩,キャンバス
さて,なぜ私がこの2つの自画像作品を紹介したのかお分かりの方は,かなりゴッホを知っている方だと推測します。
2人の自画像画を,デトロイト美術館内で鑑賞できるのは興味深いです。
次も, この作家の作品が初めて米国の公立美術館に収められ,話題になったそうです。
アンリ・マティス:Henri Matisse
窓
1916年
油彩,キャンバス
20世紀における革新的な美術の発展を促した三大アーティストの中の1人,マティスです。
特筆すべきは,「フォーイズム(野獣派)」と呼ばれる現実には存在しないその色彩感覚です。
彼の代表作とまではいきませんが,線で区切られた構成の中の色彩感覚は見事だと個人的には思います。
次に紹介するのは,デトロイト美術館の油彩画の中で私が一番鑑賞したいと思っているものです。
この正面の作品が何かわかるでしょうか。
分かった方は,かなりの美術通だと推測します。
ピーテル・ブリューゲル:Pieter Bruegel
婚宴の踊り
1566年
パネル画
16世紀のフランドル(オランダ)の画家で,農民風俗を描いたことで「農民ブリューゲル」とよばれました。
その子ども, 長男ピーテル,次男ヤンも有名な画家で,兄は「地獄のブリューゲル」弟は「花のブリューゲル」とよばれたそうです。わたしは,作品を見たことがありません。
この作品は,当時のデトロイト美術館館長により,1930年にイギリスにて発見されました。
ブリューゲルは,この「婚宴の踊り」,そして「農民の婚宴」(1567 ウィーン美術史美術館),「農民の踊り」(1569 ウィーン美術史美術館 )の3つの作品を,三部作として描いていたと考えられています。
紹介する最後の作品です。
デトロイト美術館の特筆すべきところが,これまでに書いたこと以外にもう一つあります。
アメリカのアーティストの作品をしっかりと収集していることです。
その数は,アメリカの美術館の中で3番目に多いそうです。
アメリカの画家と言えば,ウォーホールやリキテンスタインなどのポップアートが真っ先に思い浮かぶ方が多いと思いますが,私は,ワイエス,ポロック,ホッパーなどを挙げます。
デトロイト美術館所蔵のワイエスの作品を挙げたいところですが,どうも著作権に引っかかる恐れがあるため,違う作品にしました。
ちなみに,私はこの画家をデトロイト美術館のホームページで初めて知りました。
なぜ,この作品を選んだのかというと,デトロイト美術館ホームページのアメリカ人画家のコレクション紹介のトップページにあったからです。
それと,著作権の問題がないことも理由です。
フレデリック・エドウィン・チャーチ:Frederic Edwin Church
コトパクシ
1862年
油彩,キャンバス
コトパクシとは,エクアドルにある活火山の名前のようです。
画像の詳細に興味のある方は,デトロイト美術館のホームページにてご覧ください。
なんとも幻想的な風景画です。
以上が,デトロイト美術館所蔵の作品紹介です。
もちろん,これらの作品以外にも紹介すべき作品がたくさんあるのですが,ありすぎてきりがないので,5つに絞りました。
デトロイト美術館の建物自体も,かなり見ごたえのあるものです。
結婚式を挙げたカップル達が,わざわざこの美術館前に来て記念写真を撮るのだそうです。
正面玄関へ続く階段の前には,ロダンの「考える人」があります。
以上で,デトロイト美術館の紹介を終わります。
デトロイト美術館を紹介するにあたり,参考にしたサイトは以下の通りです。
一番上に,デトロイト美術館の公式ウェブサイトを置いています。
ミシガン再発見の旅 See more Michigan – 口コミ情報発信ブログ
デトロイト美術館:65,000点以上の美術品を収蔵!アメリカ屈指の規模を誇る美術館
初回は,デトロイト美術館を紹介しました。
次回は,32選した美術館の中で,デトロイト美術館があるミシガン州の地区「東北中部地区」にある州の美術館を紹介します。
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