米国造幣局の200周年記念コインの紹介の第12弾です。
今回は,北東部の大西洋中部地区の3州の紹介です。
北東部(NORTHEAST):大西洋中部地区(MIDDLE ATLANTIC)の州のコイン
ニューヨーク州の記念コイン
ニューヨーク州:NEW YORK
1788年に加盟(11番目)
州の形: an outline of the state
ハドソン川とエリー運河:the Hudson river and Erie canal
自由の女神:Statue of Liberty
11個の星:11 stars
「Gateway to Freedom」
AM
2001年に発行
州の形: an outline of the state
コイン全体にニューヨーク州の形が刻まれています。
ニューヨーク州というと,ニューヨーク市がクローズアップされますが,北の方は五大湖のエリー湖とオンタリオ湖に面していて,かなり大きな州です。
何が言いたいかというと,ニューヨーク市の都会のイメージが大きいですが,ニューヨーク州で言うと州内面積の4分の1が農業用地であり,かなりのどかな風景が多いということです。
ニューヨーク州は農業製品の大生産地であり,酪農品,リンゴ,サクランボ,キャベツ,ジャガイモ,タマネギ,メープルシロップなど多くの製品があります。
農業生産は国内でも5傑に入る州であり,キャベツの生産高ではアメリカ国内第1です。
また,有名な観光地である「ナイアガラの滝:Niagara Falls」は,ニューヨーク州のオンタリオ湖とエリー湖をつなげているナイアガラ川にあります。
「アメリカの首都は?」に対してよく間違えるのが「ワシントン.D.C」ではなく「ニューヨーク市」と答えてしまうことですが,「ニューヨーク州の州都は?」に対する答えも「ニューヨーク市なのかな?」と戸惑ってしまいます。
正解は,ニューヨーク市ではなく,「オールバニ:Albany」です。
ハドソン川とエリー運河:the Hudson river and Erie canal
ニューヨーク州は,ハドソン川が縦断しており,そして,エリー運河が横断してエリー湖と繋がっています。
コインの地図には,これらの2つの水路がくっきりと刻まれています。
これら2つの水路は,ハドソン川河口に位置するニューヨーク市の発展には欠かせなかったそうです。
自由の女神:Statue of Liberty
ニューヨークの,アメリカの代名詞と言っても過言ではない自由の女神です。
合衆国の独立100周年を記念して1886年にフランスから贈られました。
今さらながらですが,以下,自由の女神に関わる情報です。
・ニューヨーク港内のリバティー島にあります。
・リバティ島は,ニューヨーク州とニュージャージー州のちょうど真ん中あたりの海の上にあります。
・1984年に世界遺産に登録されました。
・「自由の女神:Statue of Liberty」と呼ばれていますが,正式名は「世界を照らす自由:Liberty Enlightening the World」です。
・ニューヨーク以外にも,フランス各地に点在しています。
・灯台の役目も果たしていて,アメリカ合衆国に入国しようと大西洋を船で渡ってニューヨーク港に来た移民にとって,船上から目にする新天地の象徴でした。
・高さは約 46m,台座を入れると約 92mに及び, 表面は銅板に覆われています。
・ギリシア風の衣装をまとっているのは,ギリシャ神話の自由の女神「リベルタス」をモチーフにしているためです。
・右手には聖火を持ち,高く掲げています。
・左手には独立宣言書を抱えており,独立宣言の日である「1776年7月4日」と記されています。
・左足は一歩踏み出しており,足元には引きちぎられた鎖と足かせがあり,両足で踏みつけています。これは、全ての弾圧,抑圧からの解放と人類は皆自由で平等であることを象徴しています。
・頭部の王冠には7つの突起があります。これは7つの大陸,7つの海に自由を広げるという意味があり,自由を象徴しています。
・自由の女神の内部に入ることができ,その方法は2つあります。
・一つは,台座の上部にある展望台への入場です。この展望ポイントへ行くには,215段の階段を登るか,一部エレベータで登ることで辿りつけます。
・もう一つは,王冠部分にある展望台への入場です。王冠に昇るには狭いスペースの364段の階段で上がる必要があります。途中にむき出しになった骨組みや鉄板などが組み合わされた構造も見ることができます。狭い展望台はガラス窓になっており,ニューヨーク港を見渡せます。
・リバティ島には,自由の女神博物館があります。博物館では自由の女神の歴史や過去から現在までの自由の女神の持つ意味を解説しています。
・この博物館の屋上からは,マンハッタン・スカイラインの良い眺めが見られます。
11個の星:11 stars
コインを縁取るように11個の星があり,ニューヨーク州が11番目に合衆国に加盟したことを表しています。
「Gateway to Freedom」
「自由への玄関口」という意味で,このフレーズは自由の女神に合わせたものであるとともにアメリカの最も尊重している考え方だと思います。
AM
おそらく,コインの原版のデザイン作者である「アルフレッド・マレツキー:Alfred Maletsky」のイニシャルだと思われます。
ペンシルベニア州の記念コイン
ペンシルベニア州:PENNSYLVANIA
1787年に加盟(2番目)
州の形:an outline of the state
州を代表する女神像:a statue representing the commonwealth
キーストーンのシンボル:a keystone
「Virtue」「Liberty」「Independence」
1999年に発行
州の形:an outline of the state
コイン全体にペンシルベニア州の形が刻まれています。
ペンシルベニア州というと,すぐに大都市「フィラデルフィア:Philadelphia」が思い浮かびますが,フィラデルフィアが州都ではなく,もう一つの大都市「ピッツバーグ:Pittsburgh」でもありません。
ペンシルベニア州の州都は「ハリスバーグ:Harrisburg」です。
州を代表する女神像:a statue representing the commonwealth
まず,「コモンウェルス:Commonwealth」が何かを説明します。
ペンシルベニア州は,「州:State」の代わりに「コモンウェルス:Commonwealth」を用いています。
州の憲法で「コモンウェルス」で表現することを規定しています。
日本語では,「連邦」という意味はありますが,他の州の state と同じく「州」と訳した方が紛らわしくなくていいと思います。
つまり,州が自分の州の呼び方にこだわっているということで,「州」と同じ意味だと捉えてよいと思います。
ペンシルベニア州以外にあと3つの州が同じように「コモンウェルス」を用いることを規定しています。
ケンタッキー州,マサチューセッツ州,バージニア州です。
さて,コインの中央に描かれているのは,ペンシルベニア州を代表する女神像です。
州都ハリスバーグにある州議事堂のドームの上に飾られている女神像です。
斜めに伸ばしたその右手は「思いやり」,左手に持つ杖は「正義」を象徴しています。
キーストーンのシンボル:a keystone
「キーストーン:keystone」とは何かといいますと,建物のアーチを造る時に,アーチの完成時にしっかりと固定するためにその頂上中央部に「要石(かなめいし)」を挟み込んでくさびのように打ちます。
その「要石」のことをキーストーンと言います。
だいたい,人の顔の形をしています。
ヨーロッパの建築をよく見ると,玄関などのアーチ状のところの上には人の顔の形をした石が挟まれている時があります。
このキーストーンは,通常いろいろな形の装飾をしていて決まった形というのはありませんが,記号というかこの様に描けばキーストーンを表すという形があります。
それがコインの左側に描かれているものです。
さて,なぜ,ペンシルベニア州の記念コインにキーストーンが描かれているかというと,州のニックネームに「要石の州:The Keystone State」があるからです。
詳しくは,「植民地時代,独立戦争に関係する州ニックネームの話 mohamoha26」にて詳しく紹介しています。
簡単に説明しますと,アメリカ独立時からペンシルベニア州が果たしてきた中心的な役割は,アーチ建築で言うと「要石」のようにとても大事な中心のようなものであるということです。
「Virtue」「Liberty」「Independence」
「Virtue:美徳」「Liberty:自由」「Independence:独立」という意味です。
これらのコインの右側に刻まれているのは,ペンシルベニア州の公式の「モットー:motto」です。
州の紋章や州旗にも書かれています。
ニュージャージー州の記念コイン
ニュージャージー州:NEW JERSEY
1787年に加盟(3番目)
ジェームズ・モンローとともにデラウェア川を渡るジョージ・ワシントン:
George Washington crossing the Delaware River with James Monroe
「Crossroads of the Revolution」
AM
1999年に発行
ジェームズ・モンローとともにデラウェア川を渡るジョージ・ワシントン:George Washington crossing the Delaware River with James Monroe
コイン全体に描かれている絵は,1776年12月25日クリスマスの日に,アメリカ独立戦争における植民地軍がデラウェア川を渡る場面が描かれています。
船の前の方に立ち,前方を見ているのがアメリカ合衆国初代大統領の「ジョージ・ワシントン:George Washington」です。
その後ろで旗を持って立っているのが,同じく5代大統領の「ジェームズ・モンロー:James Monroe」です。
この翌日の12月26日にトレントンの戦いがあり,ジョージ・ワシントン将軍率いる植民地軍が英国軍を奇襲し,歴史的な勝利を収めました。
植民地軍はそれまでに幾度も敗北し,軍隊の士気が下がっていました。
そのために,ワシントン将軍は年が暮れるまでに積極的な行動をする必要を感じ,クリスマスの日に悪天候の中,危険を伴う渡河をして,トレントンにて奇襲をする作戦に出ました。
絵をよく見ると,川には氷が浮かんでいるのが分かります。
実際に,3つに分けた部隊のうち2つは渡河できず,ワシントンは2,400名の部隊だけで攻撃に向かうことになったそうです。
奇襲時には,クリスマスの大騒ぎの後で眠りに就いて油断しているドイツ人傭兵部隊に迫り,抵抗する前に捕らえることができたそうです。
ジェームス・モンローはこの戦いで重傷を負ったそうです。
ニュージャージー州の記念コインにこの絵を描いたのは,アメリカ独立におけるニュージャージー州の役割を称えるものなのだと思います。
実は,このコインの絵柄には,元となった原画があります。
1851年にアメリカ人画家エマヌエル・ロイツェが描いた「デラウェア川を渡るワシントン:Washington Crossing the Delaware」です。
ニューヨーク市の「メトロポリタン美術館: The Metropolitan Museum of Art」に展示されています。
コインと見比べると,人の配置などの構図がほぼ同じです。
背景にもいくつもの船が川を渡ろうとしています。
船に乗っている人々は,当時の植民地にいた人々を表しているそうで,スコットランド風帽子を被った男性,アフリカ人の子孫,西部のライフル銃を持っている男性,広縁の帽子を被る2人の農夫,男性用の服を着た女性,ネイティブ・アメリカン等が描かれています。
現在,その地には「ワシントン・クロッシング州立公園:Washington Crossing State Park」があり,絶好のハイキングコースになっています。
「Crossroads of the Revolution」
「革命の交差点」,「革命の分かれ道」等と和訳されています。
アメリカ独立戦争では,ニュージャージー州は100以上もの戦闘の舞台になり,いくつか重要な戦闘も起こったため,このように呼ばれています。
蛇足ですが,ニュージャージー州以外に,「ニュー」の付く州は「ニュー・ヨーク州」「ニュー・ハンプシャー州」「ニュー・メキシコ州」があります。
AM
おそらく,コインの原版のデザイン作者である「アルフレッド・マレツキー:Alfred Maletsky」のイニシャルだと思われます
今回はここまでです。
今回のページの情報源は以下のとおりです。
「state symbols USA」
「50州25セント硬貨 Wikipedia」
「コインと語源で旅するアメリカ50州」
次回は,北東部のニューイングランド地区の州を紹介していきます。
2回に分けての最初は,バーモント州,ニューハンプシャー州,メイン州の3州の記念コインの紹介をします。
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