アメリカにある美術館の紹介の第3弾です。
最初に東北中部地区の美術館を紹介しているのですが,デトロイト美術館,シカゴ美術館と紹介してきました。
今回は,クリーブランド美術館(ランキング10位),ミルウォーキー美術館(ランキング24位),シンシナティ―美術館(ランキング31位)を紹介します。
私のランキングのやり方については,mohamoha55をご覧ください。
アメリカの美術館32選!【デトロイト美術館】 mohamoha55
- クリーブランド美術館:Cleveland Museum of Art(オハイオ州クリーブランド市)
- 歌川広重「Sudden Shower over Shin-Ohashi Bridge and Atake, from the series One Hundred Famous Views of Edo」
- 十二天像: A Heavenly General (One of the Junishinsho)
- 聖徳太子孝養像及び二王子像:Shotoku Taishi at Sixteen
- 銅鐸:Dotaku
- 火焔土器:Fire-flame Cooking Vessel (Ka’en Doki)
- カラヴァッジオ「Crucifixion of Saint Andrew」
- アンリ・ルソー「Fight between a Tiger and a Buffalo」
- ティファニー「Hinds House Window」
- ミルウォーキー美術館:Milwaukee Art Museum(ウィスコンシン州ミルウォーキー市)
- ジョージア・オーキフ 「Lake George Autumn」
- キース・ヴァン・ドンゲン「Woman with Cat」
- シンシナティ―美術館:Cincinnati Art Museum(オハイオ州シンシナティー市)
- 正方形の青銅:Wine Vessel, Fangyi
- フランチェスコ・ボッティチーニ「Madonna with Child and Saint John in Landscape」
- マッテオ・ディ・ジョヴァンニ「Madonna and Child with Saint Anthony of Padua and Saint Nicholas of Tolentino」(一部)
- フィンセント・ファン・ゴッホ「Undergrowth with Two Figures」
- ジャン=フランソワ・ミレー:Jean-François Millet「Going to work」
- ジョアン・ミロ「Mural for the Terrace Plaza Hotel, Cincinnati」
- ジョルジュ・ルオー「Clown」
- 5つの美術館を周遊すると・・・
クリーブランド美術館:Cleveland Museum of Art(オハイオ州クリーブランド市)
クリーブランド美術館は,アメリカ3大美術館(メトロポリタン,ボストン,シカゴ)にも劣らない規模を誇る美術館です。
クリーブランド美術館の開館は1916年と,かなり古いです。
注目すべきは,正面玄関前にあるロダンの「考える人」です。
よく見ると,足元が壊れています。
オーギュスト・ロダン:Auguste Rodin
「考える人:The Thinker」
1917(鋳造年)
Bronze
この「考える人」は,ロダンが生前最後に鋳造を直接指揮した作品のひとつなのだそうです。
しかし,1970年に起こった暴動により破壊され,像の下部が損傷しました。
クリーブランド美術館は,ロダンが直接鋳造に立ち会ったことを尊重して,補修していないそうです。
2010年には,旧館の背後にアトリウムが完成しました。
この空間って,素敵だと思いません?
しかも,常設展は入館料無料です!
クリーブランド美術館の日本美術コレクションは,ボストン美術館やメトロポリタン美術館に勝り,全米一の規模と質を誇るそうです。
なぜ,クリーブランドにこれほどの日本美術のコレクションがあるのかというと,GHQの美術顧問だった東洋美術研究者が館長を勤めていたため,ジャンルも時代もバランスよく体系的に日本美術を収集したのだそうです。
日本で,これまでに「クリーブランド美術館」の名前を冠した日本美術の里帰りコレクションもたびたび開催されています。
最初に日本美術を5点,時代を遡りながら紹介します。
歌川広重「Sudden Shower over Shin-Ohashi Bridge and Atake, from the series One Hundred Famous Views of Edo」
歌川(安藤)広重:Utagawa Hiroshige
「名所江戸百景 大はしあたけの夕立:Sudden Shower over Shin-Ohashi Bridge and Atake, from the series One Hundred Famous Views of Edo」
Edo period
Color woodblock print
十二天像: A Heavenly General (One of the Junishinsho)
A Heavenly General (One of the Junishinsho)
Kamakura period
Wood with lacquer,polychromy,gold and crystal eyes
日本だと「○○天」という表記になるのでしょうが,ちょっとわからないので英字のみにしました。
美術館のキャプチャーには,日本の寺院に薬師如来と12天像があり,そのうちの一つと書かれていました。
聖徳太子孝養像及び二王子像:Shotoku Taishi at Sixteen
聖徳太子孝養像及び二王子像:Shotoku Taishi at Sixteen
Kamakura period
Hanging scroll; ink and color on silk
銅鐸:Dotaku
銅鐸:Dotaku
Yayoi period
Cast bronze
火焔土器:Fire-flame Cooking Vessel (Ka’en Doki)
火焔土器:Fire-flame Cooking Vessel (Ka’en Doki)
Jomon period
Earthenware with carved and applied decoration
日本の美術館でさえ,これだけの品揃えをしているところはないでしょう。
クリーブランド美術館に行ったならば,日本美術を堪能することを覚えておいて損はないです。
西洋美術もかなりの品揃えなので,3つに絞って紹介します。
カラヴァッジオ「Crucifixion of Saint Andrew」
カラヴァッジオ:Caravaggio
「聖アンデレの磔刑:Crucifixion of Saint Andrew」
1606ー1607年
Oil on canvas
バロック絵画の巨匠,カラヴァッジオです。
バロック絵画は,ルネッサンスの終わりに登場し,光と影の明暗を明確にすることで大げさで芝居がかったような場面描写が特徴です。
レンブラント,そして,あのフェルメールもバロックに属します。
アンリ・ルソーの代表作もあります。
アンリ・ルソー「Fight between a Tiger and a Buffalo」
アンリ・ルソー:Henri Rousseau
「虎と水牛の戦い:Fight between a Tiger and a Buffalo」
1908
oil on fabric
アンリ・ルソーは,素朴派と呼ばれています。
素朴派とは,アマチュアアーチストで正式な美術教育を受けぬまま絵画を制作している者のことで,技術的なことにあまり関心がないため,独創的な作風になります。
ルソーの絵画の多くは野生動物や熱帯のジャングルを描いていますが,ルソー自身は,フランス国外に旅行したことがなく,旅行本を読んだり,パリの植物園を訪れたりして,個性的なジャングルを描きました。
この「 虎と水牛の戦い 」についていえば,バナナの実が実際とは逆に成長しています。
最後に紹介するのは,個人宅のガラス窓だったものです。
ティファニー「Hinds House Window」
ティファニーグラス:Tiffany Glass & Decorating Company
「ハインズ・ハウス・ウインドウ:Hinds House Window」
1900
Leaded glass
ティファニーグラスは,1878年から1933年にかけて,多くのガラスデザイナーを擁したガラス・スタジオです。
この作品は,クリーブランドのハウエル・ハインズ家にあった窓です。
家は1930年に壊され,この窓はクリーブランド美術館の所蔵になりました。
ティファニーというと,オープンハートで有名な宝飾会社である「Tiffany & Co.」が思い浮かびます。
ガラス・スタジオ「Tiffany Glass & Decorating Company」と宝飾会社「Tiffany & Co.」の関係性はというと…
「ルイス・コンフォート・ティファニー:Louis Comfort Tiffany」が 「Tiffany Glass & Decorating Company」 を立ち上げた人物で,この方の父親が「チャールズ・ルイス・ティファニー:Charles Lewis Tiffany」で,「Tiffany & Co.」の創業者です。
ルイス・コンフォート・ティファニー は 「Tiffany & Co.」の最初のデザインディレクターでもあります。
※クリーブランド美術館もまた,シカゴ美術館と同じように,所蔵作品の多くの画像はパブリックドメインで,ダウンロードが可能です。
これでクリーブランド美術館の紹介を終え,引き続き,ミルウォーキー美術館の紹介をします。
ミルウォーキー美術館:Milwaukee Art Museum(ウィスコンシン州ミルウォーキー市)
美しいフォルムの白い建物で有名なミルウォーキー美術館です。
建築家「サンディアゴ・カラトヴァ:Santiago Calatrava」により,2001年に旧館に足す形で作られました。
画像では閉じられていてわかりにくいですが, 巨大な翼のような屋根の部分が,10時,12時,17時に動いて姿を変えます。
翼が開いた状態です。
本当に,鳥が飛び立つイメージですね。
どのように動くか見てみたいものです。
…動画がないか探してみると,ミルウォーキー美術館が撮影したと思われるものを見つけました。
埋め込みますので,ご覧ください。
エントランスホールです。
内部はガラスをふんだんに使い,そこからはミシガン湖とミシガン湖の上に広がる爽やかな空の眺望が見られます。
また,ホールにも自然光がふんだんに降り注いでいます。
さて,気になるミルウォーキー美術館所蔵の作品ですが,ランキングするだけあって,他の大きな美術館に引けを取らないラインアップです。
ここでは,その中から一人の画家のみ,紹介したいと思います。
ミルウォーキー美術館があるウィスコンシン州出身の女性画家,ジョージア・オーキフのコレクションが揃っており,見応えがあるそうです。
ジョージア・オーキフ 「Lake George Autumn」
ジョージア・オーキフ :Georgia O’Keeffe
「Lake George Autumn」
1927
Oil on canvas
ジョージア・オーキフと言えば,花を主題とした抽象画シリーズ「フラワー・ペインティング」が思い浮かびますが,これは風景画の作品です。
アメリカで,前衛芸術がまだほとんど知られていなかった時期に,花や都市の風景,鹿の頭蓋骨などを抽象的に描いた作家です。
「アメリカモダニズムの母」と呼ばれています。
ミルウォーキー美術館のコレクションの中で,私が一番皆さんに目にしてほしい作品を次に紹介します。
キース・ヴァン・ドンゲン「Woman with Cat」
キース・ヴァン・ドンゲン:Kees van Dongen
「黒猫を抱く女:Woman with Cat」
1908
oil on canvas
フォーヴィスムのオランダ系フランス人の画家,ドンゲンです。
フォーヴィスムは野獣派とも言い,原色を多用した強烈な色彩と激しいタッチが特徴で,最初の展覧会は「檻の中にいる野獣のようだ」と表現されました。
感覚を重視し,写実主義とは違って,心が感じる色彩を表現しています。
フォーヴィスムと言えば,マティスになりますが,ドンゲンもまたフォーヴィスムの中心的人物でした。
私はドンゲンの作品は,異なった2つの感性を持っていると思います。
一つは,とても官能的で退廃的な作品。
もう一つは,とても儚いセンチな作品。
「黒猫を抱く女」は後者に入ると思いますが,ミルウォーキー美術館のコレクションの中で私がこれを選んだわけは,日本の大正時代の画家,竹久夢二がこの作品から影響を受けてよく似た作品を描いているからです。
「黒船屋」という作品で,夢二美人画の傑作と言われています。
竹久夢二伊香保記念館が所蔵しています。
ドンゲンも竹久夢二は,絵が売れなくて新聞や雑誌のイラストを描いて生計を立てていた境遇も同じです。
シンシナティ―美術館:Cincinnati Art Museum(オハイオ州シンシナティー市)
シンシナティー美術館は,1881年に創立されたアメリカで最も古い美術館の一つです。
エデンパークという広い敷地の公園の中にあり,訪問の際には周囲の散歩も楽しめるようです。
ジム・ダイン:Jim Dine
「ピノキオ:Pinocchio (Emotional)」
2007
bronze
正面入り口近くには,ジム・ダイン作のピノキオ像があります。
なんとも,のどかな感じがします。
シンシナティー美術館のアジア美術のコレクションは,米国の中でも最古のものが多く,特筆ものだそうです。
中でも,中国関係のものは新石器時代の陶器,古代の青銅祭器など,必見に値するそうです。
正方形の青銅:Wine Vessel, Fangyi
正方形の青銅:Wine Vessel, Fangyi
紀元前12世紀:12th Century BCE
cast bronze
穀倉の形をした青銅器です。
一番上の帽子のようなものは,蓋を持ち上げるためのノブだそうです。
考古学者は,この種のものを儀式用の物体と呼んでおり,当時の人々が何に使用したのかまだわかっていないそうです。
ワインを入れる器と主張する人もいれば,食べ物を保管するものと主張する人もいます。
これらは副葬品として発見されているので,死後の世界で故人を支える供養物であったと考えられています。
次に,シンシナティ―美術館所蔵のヨーロッパ絵画から,まずはルネッサンス期の2枚を紹介します。
ルネッサンス期の絵画には,題名に「聖母:Madonna」がつく作品がかなりあるのですが,紹介する2枚が私は好きです。
フランチェスコ・ボッティチーニ「Madonna with Child and Saint John in Landscape」
フランチェスコ・ ボッティチーニ :Francesco Botticini
「Madonna with Child and Saint John in Landscape」
Circa 1480-Circa 1485
tempera on wood
マッテオ・ディ・ジョヴァンニ「Madonna and Child with Saint Anthony of Padua and Saint Nicholas of Tolentino」(一部)
マッテオ・ディ・ジョヴァンニ :Matteo di Giovanni
「Madonna and Child with Saint Anthony of Padua and Saint Nicholas of Tolentino」
Early 1470s
tempera and oil on panel
↓全体をご覧になりたい方はこちら↓
Madonna and Child with Saint Anthony of Padua and Saint Nicholas of Tolentino
続いて,おそらくシンシナティ美術館所蔵の目玉であると思われる作品を2つ紹介します。
ゴッホとミレーです。
フィンセント・ファン・ゴッホ「Undergrowth with Two Figures」
フィンセント・ファン・ゴッホ :Vincent Willem van Gogh
「2人の人物のいる下生え:Undergrowth with Two Figures」
Jun 1890
oil on canvas
ゴッホが自ら命を絶つ1か月前に制作した作品です。
ウィキペディアにゴッホの作品の一覧があるので,紹介しておきますね。
ジャン=フランソワ・ミレー:Jean-François Millet「Going to work」
ジャン=フランソワ・ミレー:Jean-François Millet
「仕事に出かける人:Going to Work」
1851-1853
oil on canvas
「落穂拾い」「晩鐘」「種まく人」の作品で有名なミレーです。
人気度で言えば,上記の3作品の次に挙げられるのがこの「仕事に出かける人」ではないでしょうか。
このような作品を地方であるシンシナティー美術館が所蔵していることに驚きです。
次に紹介するのは壁一面の大作です。
ジョアン・ミロ「Mural for the Terrace Plaza Hotel, Cincinnati」
ジョアン・ミロ:Joan Miró
「Mural for the Terrace Plaza Hotel, Cincinnati」
1947
oil on canvas
シンシナティー市内のテラス・プラザホテルのスカイライン・レストランの壁に飾られていたミロの作品を,2018年に新しく改装されたシンシナティ―美術館のシュミットラップ・ギャラリーで一般に公開されました。
スペインのカタルーニャ出身の画家,ミロです。
ミロはシュルレアリズムに分類されますが(シュルレアリズムの運動に参加したからだそうですが),ダリなどの古典的・写実的描法を用いる他のシュルレアリズムの画家の作風とは全く違い,独創的です。
かなりデフォルメされた形や原色を多用した明るい色から,私は「生命のリズム」のようなものを感じます。
今回使わせてもらった画像からは感じないですが,原作はもっと鮮やかな色です。
Mural for the Terrace Plaza Hotel, Cincinnati
次が最後の紹介です。
ジョルジュ・ルオー「Clown」
ジョルジュ・ルオー:Georges Rouault
「道化師:Clown」
Circa 1918-Circa 1922
oil on paper mounted on canvas
フランスの画家,ルオーです。
後期印象派の後,マティスなど野獣派と呼ばれる鮮やかな色彩を特徴とした作家が現れます。
ルオーも同じ時期のため(マティスとは美術学校で同期)野獣派と呼ばれたそうですが,どこにも分類されない全く独自の画法の作家だと言えます。
特徴は,何といっても太い輪郭と宝石のような色彩でしょう。
ルオーの作品は,けっこう日本国内で見たことがあります。
以上,シンシナティ―美術館所蔵の作品をけっこう紹介しましたが,これらすべて常設展で,無料で鑑賞できるところがシンシナティー美術館のすごいところです。
さて,これでランキングした東北中部地区の美術館はすべて紹介しました。
5つの美術館を周遊すると・・・
シンシナティー美術館を最初の訪問地として,シンシナティー→クリーブランド→デトロイト→シカゴ→ミルウォーキー→シンシナティーと周ると上のようになります。
車でだいたい18時間ぐらいです。
それぞれの訪問地では美術館だけ行くことはないでしょうから,3日間ぐらい滞在する感じでしょうか。
となると,この5つの美術館周遊は約2週間ぐらい必要です。
約10年後のアメリカ長期滞在の際には,是非とも,候補に入れなくてはいけません。
今回はこれで終わります。
一つ,お知らせというか書いておきます。
これまで,各ページの一番最後にはアフィリエイトの広告を一つ入れていました。
終わりのという区切りが良いのと,一つぐらいは広告をという理由からでしたが,これからは止めにします。
載せても邪魔なだけで,あまり意味がないことに気が付きました。
今回の記事で参考にしたサイトは以下の通りです。
Milwaukee Art Museum(Wikipedia)
次回からは,ニューヨークにある美術館を紹介します。
次回は中でもメトロポリタン美術館を紹介します。
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