アメリカにある美術館の紹介,第14弾です。
12弾,13弾とロサンゼルスにある美術館を紹介してきましたが,今回もロサンゼルスにある美術館を紹介します。
ザ・ブロードとノートン・サイモン美術館を紹介します。
- ザ・ブロード:The Broad(カリフォルニア州ロサンゼルス)
- ロイ・リキテンスタイン:Roy Lichtenstein「Coup de Chapeau II」「Reflections on “Interior with Girl Drawing”」「Femme d’Alger」
- 草間彌生:YAYOI KUSAMA「Infinity Mirrored Room-The Souls of Millions of Light Years Away」
- ジェフ・クーンズ:Jeff Koons「Balloon Dog(Blue)」「Tulips」
- ノートン・サイモン美術館:The Norton Simon Museum(カリフォルニア州ロサンゼルス)
- フィンセント・ファン・ゴッホ:Vincent van Gogh「Portrait of a Peasant (Patience Escalier)」
- サンドロ・ボッティチェリ:Sandro Botticelli「Madonna and Child with Adoring Angel」
- ラファエロ・サンティ:Raffaello Santi「Madonna and Child with Book」
- フィリッピーノ・リッピ:Filippino Lippi「Saints Benedict and Apollonia」「Saints Paul and Frediano」
- オーギュスト・ルノワール:Auguste Renoir「Bouquet of Lilacs」
- エドガー・ドガ:Edgar Degas「Waiting」
- 踊るシヴァ神(踊る王):Shiva as Lord of Dance (Nataraja)
- アリスティド・マイヨール:Aristide Maillol「Mountain」
- ヘンリー・ムーア:Henry Moore「Two-Piece Reclining Figure No. 9」「Family Group #1」
- アンリ・ルソー:Henri Rousseau「Exotic Landscape」
- ポール・セザンヌ:Paul Cézanne「Tulips in a Vase」
ザ・ブロード:The Broad(カリフォルニア州ロサンゼルス)
「ザ・ブロード:The Broad」は,2015年にダウンタウンのグランド・アベニュー通りにオープンした現代アート美術館です。
ウォルト・ディズニー・コンサートホールやロサンゼルス現代美術館(MOCAグランド)に隣接しています。
「ブロード」という名前は,この美術館の建築費用に約1億4000万ドルを出資したブロード夫妻の名前からきています。
常設展示は無料で鑑賞できます。
ブロードには,約200人の現代アーティストの2000点の作品が収蔵されています。
ロサンゼルス現代美術館同様,現代アートの作品のため,著作権の関係で作品紹介に制限があるのですが,いくつか紹介します。
ザ・ブロードのHPからは作品の画像はダウロードできません。
ロイ・リキテンスタイン:Roy Lichtenstein「Coup de Chapeau II」「Reflections on “Interior with Girl Drawing”」「Femme d’Alger」
手前の作品
ロイ・リキテンスタイン:Roy Lichtenstein
「Coup de Chapeau II」
1996
painted and patinated bronze
向かって右の作品
ロイ・リキテンスタイン:Roy Lichtenstein
「Reflections on “Interior with Girl Drawing”」
1990
oil and Magna on canvas
向かって左の作品
ロイ・リキテンスタイン:Roy Lichtenstein
「Femme d’Alger」
1963
oil on canvas
ザ・ブロードには,ポップアートの先駆者であり,巨匠でもあるリキテンシュタインの作品が揃っています。
草間彌生:YAYOI KUSAMA「Infinity Mirrored Room-The Souls of Millions of Light Years Away」
草間彌生:YAYOI KUSAMA
「Infinity Mirrored Room-The Souls of Millions of Light Years Away」
2013
wood, metal, glass mirrors, plastic, acrylic panel, rubber, LED lighting system, acrylic balls, and water
日本の世界に誇る草間彌生です。
彼女の代表作はいろいろありますが,インスタレーション・アートである「Infinity Mirrored Room」の一連の作品は世界を驚かせたと言ってもいいと思います。
インスタレーションとは,屋内外にオブジェや装置を置いて空間を構成し変化させ,空間全体を作品として体験させる芸術です。
「Infinity Mirrored Room」は,合わせ鏡を用いて光やオブジェが無限に広がるように見えます。
ジェフ・クーンズ:Jeff Koons「Balloon Dog(Blue)」「Tulips」
ジェフ・クーンズ:Jeff Koons
「Balloon Dog(Blue)」
1996
mirror-polished stainless steel with transparent color coating
ジェフ・クーンズ:Jeff Koons
「Tulips」
1995-2004
mirror-polished stainless steel with transparent color coating
ペンシルベニア州出身の現代美術家であるジェフ・クーンズです。
ザ・ブロードは,ジェフ・クーンズのオブジェなどの作品を多数所有しています。
画像の作品は風船のように見えますが,金属でできており,かなり大きな作品です。
ジェフ・クーンズですが,数々のエピソードがあります。
・若い頃はサルバドール・ダリを崇拝しており,わざわざホテルまでダリに会いに行った。
・ニューヨークのソーホーにスタジオを持ち,30人のスタッフがクーンズの複数の作品の制作をしていた。
・イタリアで女優と国会議員だったチチョリーナと結婚した。
・これまで著作権侵害で何度か訴訟を起こされている。
いろいろ面白い作家ではあります。
これで,ザ・ブロードの紹介を終わります。
ノートン・サイモン美術館:The Norton Simon Museum(カリフォルニア州ロサンゼルス)
ロサンゼルスの郊外に森が広がり,その中に「パサデナ・オールド・タウン:Pasadena Old Town」というとても雰囲気のある街があります。
この街にはかつて,パサデナ美術館がありました。
このパサデナ美術館をアメリカの大富豪ノートン・サイモンが買い取り,自らのコレクションも加えて「ノートン・サイモン美術館:The Norton Simon Museum」を設立します。
ノートン・サイモンのコレクションは,それまでワシントン・ナショナル・ギャラリーに展示されていたぐらい価値が高いもので,14世紀ルネッサンスから19世紀印象派までの絵画が揃っています。
また,インド,ネパールなどの南アジアのコレクションも充実しています。
日本の木版画のコレクションもあります。もともとは,建築家のフランク・ロイド・ライト(代表作:ソロモン・R・グッゲンハイム美術館)が所有していたものだそうです。
パサデナ美術館は近現代の作品を所蔵していたため,それらの所蔵品とノートン・サイモンのコレクションの両方を現在のノートン・サイモン美術館は展示しています。
正面玄関付近には,ロダンの作品が多数展示されています。
画像のキャプションには「ロダンの作品たちとノートン・サイモン美術館の開館を待っている」と書かれていました。
センスがいいですね。
館内の南アジアギャラリーの様子です。
ヒンディーの神様たちが勢ぞろいしています。
私は若い時に3年間インドにいましたので,ヒンズー教には詳しいです。
その話はまた機会があったら紹介します。
ノートン・サイモン美術館にある彫刻庭園は,実に雰囲気のあるところです。
それでは,所蔵品の紹介をします。
フィンセント・ファン・ゴッホ:Vincent van Gogh「Portrait of a Peasant (Patience Escalier)」
フィンセント・ファン・ゴッホ:Vincent van Gogh
「Portrait of a Peasant (Patience Escalier)」
1888
Oil on canvas
ゴッホの自画像と言えば,麦わら帽子のものが良く知られています。
ゴッホにこの様な自画像の作品があることを,私は公式HPを見るまで知りませんでした。
ゴッホについての解説はもう必要ないでしょう。
私のブログでゴッホの作品を紹介するのはこれで14作目です。
サンドロ・ボッティチェリ:Sandro Botticelli「Madonna and Child with Adoring Angel」
サンドロ・ボッティチェリ:Sandro Botticelli
「Madonna and Child with Adoring Angel」
c. 1468
Tempera on panel
初期ルネサンスで最も業績を残したフィレンツェ派の代表的画家,ボッティチェリです。
メディチ家の保護を受け,数多くの宗教画,神話画の傑作を残した画家です。
ようやくボッティチェリの作品を紹介できます。
これまでの美術館紹介にて毎回意識して探していたのですが無かったため,アメリカにはボッティチェリの作品は無いと思っていました。
ノートン・サイモン美術館が所蔵しているとは思ってもみませんでした。
ボッティチェリの代表作は,「プリマヴェーラ」と「ヴィーナスの誕生」になると思います。
どちらも,イタリア・フィレンツェにあるウフィツィ美術館が所蔵しています。
ボッティチェリをご存じない方も,このどちらかの作品は間違いなく見たことがあり「ああ,これか」となると思います。
ラファエロ・サンティ:Raffaello Santi「Madonna and Child with Book」
ラファエロ・サンティ:Raffaello Santi
「Madonna and Child with Book」
c. 1502-03
Oil on panel
盛期ルネサンスの三大巨匠の一人,ラファエロです。
ボッティチェリに続きラファエロも所蔵しているとは,ノートン・サイモン美術館,恐るべきです。
ラファエロの代表作と言えば,バチカン市国のバチカン教皇庁の中にあるラファエロの間と呼ばれるところに展示されている「アテナイの学堂」です。
盛期ルネサンスの最高傑作の一つです。
ラファエロの作品は,これまで私のブログの中では,ワシントン・ナショナル・ギャラリーにて2作,紹介しています。
フィリッピーノ・リッピ:Filippino Lippi「Saints Benedict and Apollonia」「Saints Paul and Frediano」
向かって左
フィリッピーノ・リッピ:Filippino Lippi
「Saints Benedict and Apollonia」
c. 1483
Tempera glazed with oil on panel
向かって右
フィリッピーノ・リッピ:Filippino Lippi
「Saints Paul and Frediano」
c. 1483
Tempera glazed with oil on panel
初期ルネサンスのイタリア・フィレンツェ派の画家,フィリッピーノ・リッピです。
あまり耳にしたことのない画家かもしれませんが,ボッティチェリに師事し,ボッティチェリとともにメディチ家に贔屓にされた画家です。
父親はフィリッポ・リッピで,ボッティチェリが師事していた画家です。
画像の作品は,それぞれ聖人を描いています。
オーギュスト・ルノワール:Auguste Renoir「Bouquet of Lilacs」
オーギュスト・ルノワール:Auguste Renoir
「Bouquet of Lilacs」
1875-1880
Oil on canvas
印象派のフランスの画家,ルノワールの作品です。
ルノワールというと人物の絵が多いですが,このような静物画も独特の雰囲気を醸し出しています。
花はライラックで,春に紫色・白色などの花を咲かせ,香りがよく,香水の原料にもなります。
エドガー・ドガ:Edgar Degas「Waiting」
エドガー・ドガ:Edgar Degas
「Waiting」
c. 1879-1882
Pastel on beige laid paper
ドガの踊り子シリーズの中の1枚で,油絵ではなく,パステル画です。
踊り子が舞台発表をする前の舞台袖での様子を描いていると推測されます。
ノートン・サイモン美術館は,ドガの彫刻をこれでもかというくらい多数所蔵しています。
5体のうちの1体(一番奥)
エドガー・ドガ:Edgar Degas
「Dancer putting on her stocking」
Modeled 1896-1911; cast 1919-21
Copper alloy
以前,ワシントン・ナショナル・ギャラリーにて紹介した「14歳の小さな踊り子:The Little Fourteen-Year-Old Dancer」も,ドガが没後に鋳造したものですが,所蔵しています。
アメリカの美術館32選!【ワシントン・ナショナル・ギャラリー】 mohamoha66
踊るシヴァ神(踊る王):Shiva as Lord of Dance (Nataraja)
踊るシヴァ神(踊る王):Shiva as Lord of Dance (Nataraja)
インド・タミルナドゥ州:India: Tamil Nadu
c. 1000
Bronze
ヒンズー教の神であるシヴァのブロンズ像です。
シヴァ神のこのポーズは「ナタラージャ」と呼ばれ,踊る時のポーズです。
このポーズは「宇宙破壊後の創造,再生」を表現していて,形が決まっています。
ヨガのポーズにもなっています。
タミルナドゥ州は南インドになり,州都はチェンナイ(マドラス)です。
観光名所が多く,日本食レストランもある良いところです。
アリスティド・マイヨール:Aristide Maillol「Mountain」
アリスティド・マイヨール:Aristide Maillol
「Mountain」
1937
Lead, Edition of 6, Cast No. 2
近代彫刻家の代表者の一人,フランス出身のマイヨールです。
屋外での大きな彫刻作品は,周囲の環境とうまくマッチしているかも鑑賞のポイントだと思います。
ヘンリー・ムーア:Henry Moore「Two-Piece Reclining Figure No. 9」「Family Group #1」
ヘンリー・ムーア:Henry Moore
「Two-Piece Reclining Figure No. 9」
1968
Bronze, Edition of 7, Cast No. 2
ヘンリー・ムーア:Henry Moore
「家族:Family Group #1」
1948-49
Bronze, Edition of 4
イギリスの20世紀を代表する彫刻家,ヘンリー・ムーアです。
ノートン・サイモン美術館では,屋外と屋内に作品を展示しています。
屋内の方には代表作の一つ,「家族」が展示されています。
日本の箱根・彫刻の森美術館では,同じ作品が屋外に展示されています。
また,以前,ワシントンD.C.にあるハーシュホーン博物館と彫刻の庭の所蔵品として「王と王妃」を紹介しました。
この作品もノートン・サイモン美術館の屋外に展示されています。
アンリ・ルソー:Henri Rousseau「Exotic Landscape」
アンリ・ルソー:Henri Rousseau
「Exotic Landscape」
1910
Oil on canvas
フランスの素朴派を代表する画家,アンリ・ルソーです。
この作品は,アンリ・ルソーの絵としてよく見かける作品なのですが,ノートン・サイモン美術館が所蔵しているとは知りませんでした。
下から伸びている猿の手が,いかにも「素朴派」っぽいです。
最後は,セザンヌのこの作品でしめたいと思います。
ポール・セザンヌ:Paul Cézanne「Tulips in a Vase」
ポール・セザンヌ:Paul Cézanne
「Tulips in a Vase」
1880-1890
Oil on paper, mounted on board
チューリップを題材にした作品は,これの他にシカゴ美術館が所蔵している作品があります。
花瓶の描き方や果物の配置,すっと伸びたチューリップ,どれもセザンヌらしく緊張感を持たせるための描き方だと思います。
これでノートン・サイモン美術館の紹介を終わります。
今回のページで参考にしたHPは以下の通りです。(各美術館の公式HPは各項の最後に紹介しています。)
今回でロサンゼルスを終え,次回は同じカリフォルニア州のサンフランシスコの美術館を紹介します。
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