米国造幣局の200周年記念コインの紹介の第5弾です。
今回は,「南部」の「東南中部地区」の紹介です。
「西南中部地区」と言われてもピンとこないと思いますので,前回に引き続き,行政区分の地図で示します。
南部(SOUTH):東南中部地区(EAST SOUTH CENTRAL)の州のコイン
ケンタッキー州の記念コイン
ケンタッキー州:KENTUCKY
1792年に加盟(15番目)
フェデラル・ヒルの邸宅:the historic Federal Hill mansion
サラブレッド:a thoroughbred racehorse
「My Old Kentucky Home」
2001年発行
「サラブレッド:a thoroughbred racehorse」
ケンタッキー州は競走馬の飼育が盛んな地で,州最大の都市「ルイビル:Louisville」にある「チャーチルダウンズ競馬場:Churchill Downs」で毎年行われるケンタッキー・ダービーはアメリカで最も長い歴史を誇ります。
ケンタッキー州のサラブレッドについては,「「コヨーテ州」「アリゲーター州」「競走馬の本場」:動物由来の州ニックネームの話② mohamoha17」にて紹介しています。
「My Old Kentucky Home」
ケンタッキー州の「州歌:state song」になっているのが,1853年に「スティーブン・フォスター:Stephen Foster」が作曲した「ケンタッキーのわが家:My Old Kentucky Home」です。
ケンタッキー州は,別に州の公式ブルーグラス・ソングも承認されていて,それが「ケンタッキーの青い月:Blue Moon of Kentucky」です。
この辺については,「「ケンタッキー・ブルーグラス」:植物由来の州ニックネームの話① mohamoha19」に詳しく紹介しています。
「フェデラル・ヒルの邸宅:the historic Federal Hill mansion」
そして,この「ケンタッキーのわが家:My Old Kentucky Home」のモデルとなったのが,コイン上部に描かれている作曲者のスティーブン・フォスターの従兄弟で法律家のジョン・ローアンの家です。
「バーズタウン:Bardstown」にあり「フェデラル・ヒルの邸宅:the historic Federal Hill mansion」と呼ばれています。
バーズタウンは ,2012 年「ランドマクナリー誌:Rand McNally」の「アメリカで最も美しい小さな町」に選ばれた町です。
「ケンタッキー州教育テレビ:Kentucky Educational Television」が制作したバーズタウンの魅力を伝えるYouTubeがありましたので,埋め込んでおきます。
興味があったらご覧ください。
バーズタウンと言えば,バーボン・ウィスキーを思い浮かべる方も多いと思います。
バーボンはケンタッキー州産のウィスキーことです。
バーズタウンは「世界のバーボンの首都:World Capital of Bourbon」の別名でも知られています。
私が知っているだけでも,バーズタウンとその周辺に「ジム・ビーム:JIM BEAM」「メーカーズマーク:Maker’s Mark」「ヘヴンヒル:HEAVEN HILL」,ケンタッキー州全体に広げると「ワイルド・ターキー:WILD TURKEY」「フォアローゼズ:Four Roses」「アーリー・タイムズ:Early Times」などいろいろなメーカーがあります。
蒸留所協会が用意している6つの大手ウィスキー蒸留所を見学する「バーボン巡り:Kentucky Bourbon Trail」というプログラムがあるようで,「パスポート」にスタンプを6つ押してもらったら,プレゼントがもらえるそうです。
バーズタウンには,見学できる施設がいろいろあります。
「バーズタウン・バーボン・カンパニー蒸留所:Bardstown Bourbon Company Distillery」
国定歴史建造物「メーカーズマーク蒸留所:Maker’s Mark Distillery」
「ヘブンヒル蒸留所:Heaven Hill Distilleries」の「バーボン・ヘリテージ・センター:Bourbon Heritage Center」
バーズタウン市内の3rd Streetからは,週末を中心に「マイ・オールド・ケンタッキー・ディナー・トレイン:My Old Kentucky Dinner Train」というディナーつきの観光列車が発着しています。
ジム・ビームの蒸留所の近くまで往復約32kmを走行します。
蛇足ですが,私が店でよく注文するウィスキーのロックのベスト5です。
①ワイルド・ターキー
②ジム・ビーム
③フォア・ローゼズ
④バカルディー
⑤アーリータイムズ
このように,ウィスキーを注文するときは,ほとんどがバーボンです。
バーボンは半分以上がトウモロコシでないといけないのと,保存する樽の内側を焦がしているというところが他のウィスキーと違うところなのですが,それらから生まれる風味が合うのかもしれません。
というよりも,アメリカのお酒ということで選んでいると自己分析しています。
特にBARでは雰囲気に酔うところが大きいですから。
バカルディーは,インド滞在時代によく飲んでいたラム酒です。
こう書くと,いつもお店ではバーボンのロックかというとそうではなくて,バーボンのロックを注文するときは,BARで本当に気を許しているメンバーで飲むときで,だいたい2,3杯ぐらいです。
じゃあ,いつもは何を注文するかというと「ジン・トニック」で,時間が許す限りおかわりします。
そして,銘柄を指定できるときは,必ず「ボンベイ・サファイア:Bombay Sapphire」にしています。
このように,自分がお店で注文するお酒を振り返ってみると,ケンタッキーで作られるバーボンか,バカルディー社が作っているお酒(ボンベイ・サファイアはバカルディー社)に偏っています。
意識して注文しているわけではないのですが,ケンタッキー州のお隣のテネシー州のバーボンであるジャック・ダニエルは注文したことがないので,心のどこかでケンタッキー州を求めているのかもしれません。
州の記念コインの紹介でした…最後は自分の酒の好みの紹介になってしまいました…。
テネシー州の記念コイン
テネシー州:TENNESSEE
1796年に加盟(16番目)
3つの星:three stars
フィドル:fiddle
トランペット:trumpet
ギター:guitar
楽譜:sheet music
「Musical heritage」
2002年発行
「Musical heritage(音楽の遺産)」
テネシー州は,現在のルーツとなる音楽スタイルが各所にあります。
「音楽遺産:Musical heritage」とコインにも記してその功績を称えています。
「3つの星:three stars」「フィドル:fiddle」「トランペット:trumpet」「ギター:guitar」「楽譜:sheet music」
コインにデザインされた3つの星と3種類の楽器は,現在のルーツとなる音楽が育った地域の音楽スタイルを象徴しています。
☆ トランペット
ブルースが育った「メンフィス:Memphis」を中心とした西部
メンフィスでは,「メンフィス・ブルース」「メンフィス・ソウル」が育ちました。
ミシシッピ・デルタの地域にいたブルースやゴスペルのシンガーは,近くの大きな町であるメンフィスを目指し,メンフィスで活動するようになります。
ミシシッピ・デルタについては,「旅の準備の始まり:ミシシッピ川の話③ mohamoha8」を読んでいただくといいと思います。
メンフィスにある「サン・スタジオ:SUN STUDIO」にて,「ブルースの父」であるW・C・ハンディをはじめ,B.B.キングなど数多くのブルース,リズム&ブルースのシンガーがレコーディングをして有名になっていきました。
また,このスタジオで,エルヴィス・プレスリー,ジェリー・リー・ルイス,カール・パーキンスなどが,後に「ロカビリー」とか「シックスティーズ」と呼ばれる数々のロックンロールの名曲をレコーディオングしています。
このスタジオは,現在も建物が残っており,見学することができるそうです。
エルヴィス・プレスリーはミシシッピ州生まれですが,メンフィスに家族で引越し,高校卒業後にすぐにサンハウスを訪れ音楽活動を行い,有名になっていきます。
メンフィス市内にあるプレスリーの墓には今も訪れる観光客が後を絶ちません。
サンスタジオがブルースやポピュラーなロックンロールを輩出したのに対し,「スタックス・レコード:STAX RECORD」は,ソウル・ミュージックの名曲を次々と世に出しました。
サム&デイヴ,オーティス・レディング,ウィルソン・ピケットなどが活躍します。
メンフィスの繁華街の中心部には,「ビール・ストリート:Beale Street」があります。
「ブルースの王様:King of Blues」と呼ばれるB.B.キングも少年時代は,このビールストリートのストリート・ミュージシャンの一人でした。
彼のクラブ「B.B.キング・ブルース・クラブ」もこの通りにあります。
ビール・ストリートについては,少しだけですが「mohamoha6~11までのアメリカ風景画像紹介 mohamoha13」で紹介しています。
他にも「メンフィス・ロックン・ソウル博物館:Memphis Rock ‘n’ Soul Museum」があり,音楽の歴史をたどることができます。
この博物館の展示は,スミソニアン博物館の協力を得て,ブルースの発展に影響を与えたアーティストたちのエピソードを紹介しています。
☆ ギター
カントリー・ミュージックが育った「ナッシュビル:Nashville」を中心とした中部
州都のナッシュビルは,「ミュージック・シティー:Music City」と呼ばれています。
この町が「ミュージック・シティー」と呼ばれるようになったのは,1960年代にこの町にレコード会社と録音スタジオが次々とオープンし,カントリー音楽をはじめいろいろな種類の音楽レコードがこの町から生まれたからです。
エルビス・プレスリーも,メンフィスの後,200 以上の曲をここでレコーディングしています。
もう一つあります。
この町にある「ライマン公会堂:Ryman Auditorium」から,全米に公開生放送されるラジオ番組「グランド・オール・オプリ:Grand Ole Opry」によって,カントリー・ミュージックが全米に広まったからです。
1925年から世界大戦中も中止されず,現在も年に数回,ここから放送されているようです。
ライマン公会堂は「カントリーミュージックの母なる教会:Mother Church of Country Music」と呼ばれており,見学ツアーも開催されています。
もともとライマン公会堂は,蒸気船の船長によって建てられた礼拝堂兼集会堂でしたが,音響効果が優れていたので音楽会にも利用されていて,後に公会堂になったようです。
YotuTubeで探してみたら,私がYouTubeでよく聴いているミュージシャン「ビリー・ストリングス:Billy Strings」が演っていたので,埋め込んでおきます。
公会堂の内部も含めて,是非聞いてください。
<ビリー・ストリングスのYouTubeが無くなっていたので,代わりに「Home Free」というライブのYouTubeを埋めておきます。2023.11>
ついでにもう一つ,私がとても気に入って,よく聴いているビリー・ストリングスのYouTubeも埋め込んでおきますので,こちらもどうぞ。
現在,ナッシュビルには,カントリーだけでなく,ブルーグラス,ジャズ,ロック,ポップ,クラシック音楽を楽しめる 120 以上のライブハウスがあります。
また,世界最大のポップス博物館として知られている「カントリーミュージック殿堂博物館:Country Music Hall of Fame and Museum」があります。
☆ フィドル(バイオリン)
「アパラチア音楽:Appalachian Music」が生まれた東部
「アパラチア」とは,もちろん,テネシー州の東にあるアパラチア山脈付近を指します。
このアパラチアの地域で,1920年代にカントリーやブルーグラスの基となった「アパラチア音楽」が生まれます。
州で言うと,テネシー州だけではありません。
テネシー州の東部とバージニア州南西部の山間部になります。
どちらかと言うと,テネシー州というよりはバージニア州の方が中心になると思います。
アパラチア音楽は,ヨーロッパとアフリカの音楽に影響を受けて生まれました。
詳しく言うと,アイルランドやスコットランドの伝統音楽と讃美歌,アフリカ系ブルースです。
その音楽が,後にナッシュビルでカントリーミュージックとして広まったり,ケンタッキー州でブルーグラスミュージックとして広まりました。
アパラチア音楽を語る場合,発祥の地を巡る音楽遺産トレイル「クルキッドロード:THE CROOKED ROAD」を紹介せずにはいられません。
最初の地図にも描きこみましたが,拡大地図を示します。
私がこの遺産トレイルを知ったのは,「旅チャンネル」の番組「音楽と旅するアメリカ」の中の「音楽遺産トレイル THE CROOKED ROAD」を数年前に視聴してからです。
音楽評論家のピーター・バカランが解説・監修をしていて,内容がとても濃くて,興味深く見られる番組です。
私は,旅チャンネルを契約しているわけではなく,U-Nextで視聴しました。
クルキッドロードの中でも特に中心となる町は「ブリストル:Bristol」になります。
1927年,ビクター・レコードのラルフ・ピアというプロデューサーが,ブリストルで地元音楽家の音楽録音を始め,アパラチア地域の伝統的な民衆音楽を世に広めました。
ブリストルは変わった町で,市内メインストリートの中央がバージニア州とテネシー州との州境となっていて,テネシー州のブリストルとバージニア州のブリストルの双子都市になっています。
1998年,合衆国議会が公式にブリストルを「カントリー・ミュージックの誕生地:Birthplace of Country Music」として承認しました。
さて,話は変わって,フィドルに移します。
フィドルとバイオリンは全く同じ楽器と捉えていいのですが,この2つの大きな違いは,楽器で演奏される音楽の種類にあります。
バイオリンはクラシック作品に関連しているのに対し,フィドルは民俗音楽とより密接に関連しています。
フィドルは,ダンスに使用されるより速いビートを持つ曲に適した楽器としてセットアップされます。
以上で,テネシー州の西部,中部,東部の3つの異なる音楽の話を終わります。
テネシー州では,議会によって承認された「公式な州の歌:Official State Songs of Tennessee」が,なんと10曲もあります。
知らない曲ばっかりだったのですが,1曲だけ知っている歌がありました。
「テネシーワルツ:Tennessee Waltz」です。
1965年にテネシー州の公式曲となりました。
私のブログで以前紹介した「レイナ・デル・シド:REINA DEL CID」が歌うテネシー・ワルツのYouTubeを埋め込みます。
ご覧ください。
ミシシッピ州の記念コイン
ミシシッピ州:MISSISSIPPI
1817年に加盟(20番目)
モクレンの花:magnolia blossoms
「The Magnolia State」
2002年発行
「モクレンの花:magnolia blossoms」
「The Magnolia State」
「モクレン」は,ミシシッピ州の「公式の州花:the state flower」そして「公式の州木:the state tree」になっています。
英語でマグノリアと呼ばれるモクレンは中国南西部原産ですが,気候が温暖なアメリカ南部でとても親しまれる植物となっています。
ミシシッピ州のモクレンについては「「ひまわり州」「モクレン州」「常緑樹の州」:植物由来の州ニックネームの話② mohamoha20」で詳しく紹介しています。
アラバマ州の記念コイン
アラバマ州:ALABAMA
1819年に加盟(22番目)
椅子に座り膝の上の本を読むヘレンケラー:Helen Keller reading braille from a book in her lap
文字と点字の「HELEN KELLER」
ツバキの花:camellia blossoms
ダイオウマツの枝:a longleaf pine branch
「Spirit of Courage」
2003年発行
「椅子に座り膝の上の本を読むヘレンケラー:Helen Keller reading braille from a book in her lap」
ヘレン・ケラーってアラバマ州の人だったんですね。
私は知りませんでした。
調べると,アラバマ州の「タスカンビア:Tuscumbia」というところに少女時代を過ごした生家があります。
生家は「アイビー・グリーン:Ivy Green」と呼ばれていて,博物館として一般に公開されています。
1970年に国の歴史登録財,1992年に国定歴史建造物に指定されています。
敷地内には,母屋の他にサリバン先生の厳しい教育を受けた小屋,流れ出る水を感じ,初めてものには名前があることを悟った有名な井戸があります。
「文字と点字のHELEN KELLER」
コインには「ヘレン・ケラー」の名前が刻されていますが,その上をよく見ると,点字も刻まれています。
さすがにこの小さな点字を触読するのは不可能だと思われますが,アメリカの流通コインとしては初めて点字が採用されたコインなのだそうです。
「ツバキの花:camellia blossoms」
ツバキの花は,アラバマ州の公式の「州花:state flower」です。
「冬のバラ」とも呼ばれるツバキは,多くの異なる色や花の形で米国南東部で数多く栽培されています。
「ダイオウマツの枝:a longleaf pine branch」
ダイオウマツは,アラバマ州の「公式の州木:state tree」です。
ダイオウマツはアメリカの南東部の平野に自生していましたが,現在はかつての約3%になってしまったそうです。
それにともない,ダイオウマツの生態系に関連する30以上の植物や動物種が絶滅の危機に瀕しています。
細い葉がとても長い松の木なのですが,松ぼっくりから出る芽は,最初に長い葉から生長するそうで,雑草と間違えられてしまうそうです。
私はこの画像で初めて知りました。
「Spirit of Courage」(勇気の精神)
コインには「勇気の精神」と書かれた横断幕が配されています。
私の推測ですが,ヘレン・ケラーのイラストにちなんだ言葉なのだと思います。
今回は以上です。
今回のページの情報源は以下のとおりです。
「state symbols USA」
「50州25セント硬貨 Wikipedia」
「コインと語源で旅するアメリカ50州」
記念コインの紹介は一旦停止して,次回からの2回は,ページのトップやアイキャッチ(ホームに紹介される画像)に使用している画像の紹介第3弾をします。
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